筑波大とNIMS,有機薄膜太陽電池に用いる高純度な高分子材料を簡便に精製する方法を開発

NEDOの先導的産業技術創出事業(若手研究グラント)において,有機薄膜太陽電池に用いる高分子材料の新たな合成手法を開発してきた筑波大学の研究グループは,物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループと共同で,有機薄膜太陽電池に用いる高純度な高分子材料を簡便に精製する方法を開発。高純度の達成により,有機薄膜太陽電池の光電変換効率が0.5%から4%に向上,長寿命化も明らかとなった。

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有機薄膜太陽電池の材料の一つであるπ共役系高分子は,これまで主にクロスカップリング反応を用いて合成されてきた。この手法は適応範囲が広く様々な高分子の合成が可能である一方で,副生するスズやホウ素,リンなどを含む不純物を反応後に高分子から分離する必要があった。

これに対して研究グループは,π共役系高分子の合成において,クロスカップリング反応の代替として新しいカップリング反応を用いることで,高純度の高分子が簡便に合成することに成功した。開発した合成方法では,反応剤のC-H結合を反応点とするカップリング反応を用いる。そのため,従来のクロスカップリング法では必須であったホウ素化合物などを必要としない。さらに反応条件の検討を行なうことで,ホウ素に加えてリンの添加も必要としない合成法も確立した。

これによって,生成物である高分子にホウ素やリンなどの不純物が残存する懸念を抜本的に解消した。次に,期待されるように高分子の純度が向上しているかを,従来法で合成した高分子と比較することで検証した。元素分析や微量分析の結果から,同じ精製方法であるにも関わらず,新規合成法によって得られた高分子が高純度であることが明らかになった。

実際に太陽電池の材料として評価したところ,新規合成法によって得られた高純度材料を用いた場合には,4%の光電変換効率が得られた。一方で,従来法で合成した同じ骨格の高分子では変換効率は0.5%であることから,この合成法が可能にした高い純度が太陽電池特性の向上に大きく寄与していることが確認できた。さらに,連続光照射下での変換効率の経時変化を追跡したところ,高純度材料を用いることで素子が長寿命化することも見出した。

この方法を用いて,高い変換効率を示す最先端材料を高純度で合成すれば,さらに変換効率を向上させることが可能になる。また,大量生産にも適した合成手法であることから,汎用性を高めることで新たな製造技術にもなる。

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