大阪大学大学院工学研究科・准教授の高橋幸生氏と理化学研究所・放射光科学総合研究センター・センター長の石川哲也氏らの研究グループは,これまで不可能だった厚い試料に対する高分解能でX線イメージングが可能であることを実証した。

全反射集光鏡によって7keVの放射光X線を∼500nmのスポットに集光する。集光点に105μmのギャップを有する2層構造試料を配置し、試料からの散乱X線強度をCCD検出器で測定する。
今回研究グループは,被写体を入射X線に垂直な薄い層の積み重ねとし,層間でのX線波面の変化を考慮するマルチスライスアプローチを取り入れた,X線タイコグラフィーを実証。大型放射光施設「SPring-8」において,105μmの厚さの試料を観察したところ,投影近似による限界の192nmを遥かに超える約50nmの分解能を達成した。

マルチスライスアプローチによって、2層構造を有する試料の1層目と2層目が分離して差構成された。従来法では、再構成像の空間分解能が悪くアーティファクトが多数現れているが、マルチスライスアプローチでは、空間分解能が高く、ほとんどアーティファクトが現れていない。

マルチスライスアプローチで再構成された位相像と電子顕微鏡画像を比較すると細かい構造が一致しており、本手法が高い空間分解能を有していることが分かる。断面プロファイルから50nm程度の空間分解能を有していることが確認された。
実証したマルチスライスX線タイコグラフィーを用いることで,厚い試料に埋もれたナノ構造物や組織の観察が可能となることから,例えば,三次元集積回路の微細配線や生体の骨組織の非破壊・高分解能・三次元観察への応用展開が期待できる。
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