2014年も注目の的の3Dプリンタ―日本が強みを発揮するには?

3Dプリンタが,2014年もその存在感を増しそうだ。IDC Japanの調査では,2013年の世界3Dプリンタ出荷台数は2012年(3万1千台)の2倍を超える6万8千台に急増したと推定されている。

同市場は2012年から2017年にかけて急速に拡大し,年間平均成長率は出荷台数で59%,売上額で29%と予測している。その結果,世界の3Dプリンタ市場は,2017年には出荷台数が31万5,000台,売上額は27億ドル近くに達し,それに伴って関連サービス/消耗品市場も急成長するとみている。

ただ,装置市場を見ると,欧米メーカの勢いが強まっている。そもそも3Dプリンタは約30年前に日本でその原理が発明されたもの。しかしながら,中々市場に根付かなかった。そのため,国内メーカは統廃合を繰り返す結果となり,市場縮小を余儀なくされていた。

一方,欧米メーカは長年にわたって3Dプリンタ技術に関するノウハウを蓄積し,自らの利益につなげるビジネスモデルを構築してきた。さらに積極的なM&Aも進め,ソフトウェアや材料を含め,川上から川下にいたる企業の取り込みも進めていった。日本政策投資銀行がまとめたレポート「ものづくりにおける3Dプリンタ」では,この結果が現在の欧米メーカにおける市場シェア寡占につながっていると指摘する。

このレポートでは,日本と並んでものづくり大国と言われるドイツの3Dプリンタに関わる技術開発,ビジネスの動向などが取り上げられている。ドイツのものづくりの強みはどこにあるのか?日独を比較し考察している。

ドイツでは企業数の99%以上を中小企業が占めているという。このため,連邦政府や州政府における支援も手厚く,こうした環境が新たな技術やビジネスを生み出しやすくしているとしている。特に3Dプリンタは,大量生産を必ずしもアプローチするものではないため,市場ニーズと上手くマッチングしていると考えられている。

また,研究機関の役割も大きく,効果的な連携体制により,こうした企業の研究・開発を支えている。例えば,Fraunhoferはメーカとユーザの両者の視点を踏まえ,実益につなげる研究手法を重視するという特徴を持つ。さらには諸外国との研究連携も活発に取り組んでいる。

3Dプリンタに関しては,とりわけ金属造形に強みを持つ。金属造形3Dプリンタ市場ではEOS社とコンセプトレーザの2社のシェアが高く,いずれもドイツに本社を置く。両社の3Dプリンタは,レーザが造形用光源として採用しているが,ドイツはレーザ技術開発でも政府主導で取り組むなど,先導的な立場にあることは否めない。

こうした中にあって,今後日本はどうすべきかだが,レポートでは,一企業の取り組みだけでなく,幅広い知見を取り込むことが重要だとしたうえで,その仕組みづくりが必要だとしている。

現在,国内では3Dプリンタに興味を示す企業も増え,3Dプリンタ導入の動きが加速しており,国内メーカも開発や販売展開に力を注いでいる。また,国内での取り扱い企業も増加,異業種からの造形事業の参入も相次ぎ,サプライチェーンが確立し始めている。いよいよ3Dプリンタ市場が活況を呈してきたように見える。今後,ものづくりへの効果的な3Dプリンタの活用が進むものと考えられるが,日本の強みを活かした3Dプリンタ技術やビジネスの創出に向け,戦略的な連携や施策の構築が期待されている。

出典:日本政策投資銀行。詳細はこちら