海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域および東京大学地震研究所の研究チームは、海溝付近に置かれた観測装置(海底電位磁力計)を用いて、東日本大震災で発生した津波に伴う磁場の変動を捉ることに成功した。
東日本大震災が発生する約6ヶ月前に、研究チームは東北沖の海底に「海底電位磁力計」(以下OBEM)と呼ばれる装置を北緯39度の海溝から約50km東側の海底(水深5830m)に設置した。
この装置は当初、海底での電流や磁場を観測することで地球内部の構造を調べるために設置したものだったが、震災後に回収したところ磁場データに地震発生の約5分後にパルス状の変動が記録されていた。そして、詳細な解析の結果、この磁場の変動が津波によって生じたことが明らかになった。さらに、磁場の鉛直成分の波形からは、この津波の高さが水深およそ6000mの場所の津波としては極めて高い約2mであることが推定された。
これまでに津波による磁場変動は数例しか観測されておらず、東日本大震災に関連する磁場変動の観測は本研究が初めてとなる。
磁場データよりこの海底観測点で見られる短周期の津波は、1)観測点のほぼ西方向で発生したこと、2)設置点から50km以内の位置で発生したこと、の二つが明らかになった。このことは、短周期の津波の発生場所がこれまで考えられていた東北太平洋沖震源のすぐ東側の場所ではなく、震源の北東約100kmの場所であったことを示している。また、本観測点に対して海溝の反対側に設置した津波計のデータを用いた津波伝播のシミュレーションからも、この結果が正しいことが裏付けられた。
この成果は、東日本大震災において津波が巨大化した原因の解明に役立つとともに、今後の大地震における津波予測にも貢献することが期待される。
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