海洋研究開発機構アプリケーションラボ研究員の土井威志氏らは、ニンガルー・ニーニョと呼ばれるオーストラリア西岸に現われる地域気候変動現象の予測可能性を世界で初めて示した。
2011年南半球の夏、オーストラリア西岸域の海水温は過去に先例の無いほど異常に暖まり、海洋生態系や農業が甚大な被害を被った。この現象は、エル・ニーニョに代表される熱帯気候変動現象との類似性から、ニンガルー・ニーニョと名づけられ、気候研究分野で近年注目されている。
この研究では、日欧協力によって開発された大気海洋結合大循環モデルSINTEX-F1を基にした「SINTEX-F1季節予測システム」を、JAMSTECが有する地球シミュレータで計算し、過去30年の当該地域の気候変動データと比較したところ、ニンガルー・ニーニョの発生が半年前から予測可能であることを明らかにした。特に2011年に発生した極めて強いニンガルー・ニーニョについては9か月前から予測できた。
これまで異常気象の予測研究は、エル・ニーニョに代表されるような数千キロメートル規模の熱帯気候変動現象の予測研究が中心だったが、今後、中緯度の大陸西岸域で発生する数百キロメートル規模の地域と密接に関連した気候変動現象の予測研究にも新たな扉が開かれた。この成功を契機に、アプリケーションラボではニンガルー・ニーニョに代表されるような地域気候変動現象とそれに伴う自然災害の早期警戒システムを構築し、季節予測情報が地域社会の活動に具体的に貢献できるように展開していく。
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