東京大学物性研究所准教授の松田康弘氏らは、京都大学大学院工学研究科教授の陰山洋氏、スイス連邦工科大学ローザンヌ校教授のミラ フレデリック氏らと協力して、118テスラという極限強磁場中で、SrCu2(BO3)2の磁化測定にはじめて成功した。また、その結果から、磁気的な性質がその飽和状態の2分の1を示す状態(2分の1領域)において、SrCu2(BO3)2が2分の1プラトー(磁化の値が平坦になること)と呼ばれる新たな量子状態を示すことを観測し、その完全な解明に成功した。
電子の振る舞いが量子力学に支配されている物質の一例として、ストロンチウム(Sr)、銅(Cu)、ボロン(B)、酸素(O)で構成される、SrCu2(BO3)2があるが、Cuの電子が微小な磁石(スピン)をもち隣のCuの電子スピンと対(ダイマー)をつくり、磁場をかけた際のこのダイマーの磁気的な振る舞いが、単純な理論では説明できない不思議な階段状の変化を示すことから発見以来10年以上研究されてきた。しかし、研究には非常に強い磁場が必要となることから、これまでSrCu2(BO3)2 の磁気的な性質がその飽和状態の3分の1を示す状態(3分の1領域)における振る舞いの解明までにとどまっていた。
この研究の成果は、SrCu2(BO3)2のような二次元磁性体が持つ量子性の理解に大きく貢献し、新たな量子デバイス実現につながるものと期待される。
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