東レは有機薄膜太陽電池において,単層素子としては世界最高レベルとなる10%超の変換効率を達成した。同社が新たに開発した高配向性の芳香族ポリマーをドナー材料に,フラーレン化合物をアクセプター材料に用いることで,発電層を高度に配向制御すると共に,厚膜化(従来比約3倍)に成功したもの。今回開発した有機薄膜太陽電池は,外部量子効率が光吸収波長領域の全域に渡って9割を超え,短絡電流が無機太陽電池に匹敵する値に達するなど,極限に近い高効率化を実現している。
同社は,従来ドナー材料(N-P7,変換効率~5.5%)の発電メカニズムを詳細に解析することで,光吸収量と電荷移動度が不充分であったことを明らかにした。これに対し,光吸収と電荷移動の方向がドナー材料の主鎖平面と直角の関係にあることに着目して改良検討を進め,太陽電池基板と平行(入射光や電荷移動の方向と直角)にポリマー主鎖平面が配向しやすい化学構造を,ドナー材料の主鎖・側鎖構造に巧みに導入することにより,吸収端波長:約780nm,吸光係数:約20万cm-1,電荷移動度:約1×10-2cm2/Vsと,高い光吸収特性と導電性を両立する芳香族ポリマー系ドナー材料を新たに開発することに成功した。
今回の成果は,太陽電池素子の発電性能とドナー材料の配向特性との関係を明らかにし,有機薄膜太陽電池の実用化に向けたさらなる高効率化のための指針を提供するもの。
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