京都大学霊長類研究所准教授の友永雅己氏、新潟国際情報大学講師の伊村知子氏らの共同研究グループは、人間とチンパンジーの視覚探索の能力を比較し、人間のようにチンパンジーも、遠近法によって描かれた2次元空間から奥行きを知覚し、「天井」よりも「地面」の上の色の違いをすばやく検出することを発見した。
実験は、人間とチンパンジーに複数並んだ立方体を示し、その中に、一つだけ色の違う面を持ったものがあり、この立方体を選んでそれに指で触れると正解とし、二つの条件を設けて正解の立方体に触れるまでの時間を計測した。
一つ目は、左図のように立方体の「上面」の色が違う条件。この条件では、「地面」に沿った、「地面」と平行に見える面の中に違う色が現れる。二つ目は、右図のように立方体の「側面」の色が違う条件。この条件では、「地面」には沿わない、別の方向に違う色が現れる。
研究グループは、もし、「地面」に沿って注意が広がるのだとすれば、「地面」の方向に沿った色の違いをすばやく発見できるだろうと考えた。つまり「上面」の色が違う条件の方が、「側面」の色が違う条件に比べ、発見の時間が短くなるはず。その結果、「天井」のような上方の面に立方体を配置した場合には、成人でもチンパンジーでも、二つの条件間で時間に差がなかった。
人間よりも樹上で過ごす時間の長いチンパンジーにおいて人間と同様の視覚探索の傾向が見られたことから、地上を優先的に探索する能力は、少なくとも人間とチンパンジーの共通祖先で共有されていた可能性が示唆された。
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