理研、社会性や情動に関する行動を制御する因子をマウスで発見

理化学研究所は、神経系に発現するタンパク質の分解を制御する因子の1つ「RINES」が、抗うつ薬や抗不安薬の標的の1つである酵素「モノアミンオキシダーゼ」の分解を促して、正常な情動行動を制御していることを発見した。

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気分や、怒り・恐れ・喜び・悲しみなどといった突発的な感情の動きは、脳内で働く「モノアミン」という神経伝達物質によって調節されている。モノアミンには注意力や衝動性などに関わるノルアドレナリンや,精神を安定させる働きがあるセロトニンなどが含まれる。

これらの量が適切に調整されていれば,気分も感情の動きも正常に保たれる。ノルアドレナリンやセロトニンを分解して量の調節を行なうのはモノアミンオキシターゼという酵素。最近の研究では、その酵素の1つである「モノアミンオキシターゼA(MAO-A)」の脳内量が、突然の感情の動きや攻撃性などに関連するという結果が報告されているが、MAO-Aの量を制御するメカニズムはいまだに分っていない。

研究チームは2008年に、タンパク質を修飾してその分解を促す膜タンパク質「RINES」を発見している。このRINESの役割を明らかにするために、RINESを欠損したマウスを作製したところ、外見上は正常なマウスと変わらないが、行動に異常が見られた。そこで、RINES欠損マウスに対していくつか行動実験を行なった結果、不安の高まりなどの感情の動きの異常や、攻撃性などの社会性に関連する行動の異常を確認した。また、不快感をもたらす電気刺激や水泳のストレスに対しての回避行動などが低下していた。

詳細に調べた結果、不快な刺激後のRINES欠損マウスの脳ではモノアミンの量が低下し、一方でMAO-Aの酵素活性が高くなっていた。このことから、MAO-Aの分解にRINESが関係している可能性が示された。ヒトとマウスの培養細胞を用いてRINESの関与を調べたところ、RINESはMAO-Aに結合して分解を促進していることが分った。

今後、ヒトにおいてもRINESの変異が不安や情動、社会性行動と関連することが分かれば、RINESを標的とした情動の障害や社会性障害を伴う神経疾患の創薬の重要な知見になると期待される。

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