リコー,レーザ援用技術によるPZT薄膜の結晶化に成功

リコーは,ゾル-ゲル法を用いた独自技術でインク化して作製したPZT(ジルコン酸チタン酸鉛) を,半導体レーザを用いて結晶化させ,得られた薄膜がPZTの特長である変位特性を示すことを実証した。これは,レーザ照射による熱作用で結晶化させるレーザ援用技術を半導体レーザで実現したもの。

従来,PZTの結晶化工程は電気炉で750℃程度に加熱していたが,ほとんどの熱量が基板および炉自体の温度の上げ下げに使用されてしまっていた。今回のレーザ援用技術はレーザビームで基板上のPZT薄膜のみを加熱することでエネルギーを効率的に利用できる。

この際,膜にクラック・剥離を生じさせずに,いかに均一に結晶性を向上させるかということが課題であったが,レーザビームのスポット形状をデバイス形状に合わせて長方形にでき,かつレーザ光の強度分布を矩形にできる独自の光学系により実現した。さらに,クラック・剥離に対してはレーザパワーと照射時間を適正化することで克服した。

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レーザ援用技術で変位特性を有するPZT薄膜を得たのは世界的に見ても数例。他の例はエキシマレーザを使用しているため,装置が大型かつ高価なうえ,パルスレーザ光なので処理に時間がかかる。今回の方法は半導体レーザを使うため,装置が小型かつ安価,さらに連続光なので短時間に処理できる。さらに,ゾル-ゲル法では結晶化の他に乾燥,熱分解の工程でも加熱が必要だが,この工程にもレーザ援用技術を適用することで,さらなる省エネ化に貢献できる。

この技術は,2012年5月に同社が発表したIJP法(インクジェットによる印刷技術)によるピエゾ(圧電)素子の形成技術と組み合わせることで,微小サイズ(数~数百ミクロン大)のアクチュエータを作製できる。これら技術の応用製品としては,微小エリアで変位機能が必要とされる画像機器,ハードディスクドライブ,ディスプレイ等のMEMS分野のみならず,微小な圧力や加速度を測定できるセンサ分野にも展開が可能。

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