東工大,レーザを用いてピコ秒レベルで変化する有機結晶の構造の撮影に成功

東京工業大学 大学院理工学研究科研究員の恩田健氏と,同教授の腰原伸也氏らの研究グループは,有機光エレクトロニクス材料の中で起きる分子の移動や変形を,2兆分の1秒の時間分解能(撮影間隔は10兆分の1秒)を持つ,電子線を用いた直接的な結晶構造解析法(分子動画)により明らかにした。これまで,有機分子で超高速に起こる構造変化の直接的観測手段は,100億分の1秒程度までしかなかった。

この研究では,「超短パルスレーザ」と「高輝度超短パルス電子線」を組み合わせた分子動画技術を新たに開発した。そして,超高速光スイッチ材料として注目されている有機電荷移動錯体結晶(EDO-TTF)PFについて,光を照射した時の結晶内での分子の変形や移動を直接的に明らかにした。

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開発した装置は,10兆分の1秒以下の超短パルスレーザー光を金(Au)の薄膜へ照射し,その表面から放出された電子バンチをさらにRFキャビティで圧縮することにより,試料に照射する電子バンチの時間幅を10兆分の1秒程度に抑えた。この電子バンチを,100nmまで薄く切った(EDO-TTF)PF結晶へ照射し,透過してきた電子の回折パターンをCCDでとらえることにより回折像を得た。

一方,試料を励起するための光は,電子バンチ生成に用いたレーザ光の一部を分けて用い,電子バンチとの時間差を任意に制御することにより測定を行なった。この測定装置における時間分解能は0.4ピコ秒(2.5兆分の1秒)。

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これは,有機光エレクトロニクス材料の超高速な結晶構造変化を動画技術で直接観測した初めての例。また人工光合成など有機物からなるさまざまな新規材料や,たんぱく質など有機生体機能分子の機能解析・新材料設計にも新たな道を切り開く成果。

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