京大ら,患者さん由来iPS細胞でアルツハイマー病の病態を解明

京都大学大学院生の近藤孝之氏,同大准教授の井上治久氏,長崎大学岩田修永教授の研究グループは,京都大学教授の山中伸弥氏らの研究グループと協力し,複数のアルツハイマー病(AD)の患者ごとに存在する病態を明らかにして,iPS細胞を用いた先制医療への道筋を示した。

研究グループは,若年性(家族性)ADの原因遺伝子であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)に遺伝子変異を持つ患者と,家族歴のない高齢発症(孤発性)ADの患者の皮膚からiPS細胞を作製し,大脳の神経系細胞に分化誘導した。

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解析の結果,APP-E693Δと呼ばれる変異があると,アミロイドベータ(Aβ)というタンパク質がオリゴマーと呼ばれる凝集体となって細胞内に蓄積し,小胞体ストレスと酸化ストレスを引き起こし,細胞死を生じ易くすることが分かった。

また,ドコサヘキサエン酸(DHA)によって,これらの細胞内ストレスは軽減され,神経細胞死も抑制された。さらに高齢発症の孤発性AD患者の中にもAPP-E693Δ変異と同様の細胞内Aβオリゴマーおよび細胞ストレスが見られるケースがあることが分かった。

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これらの研究結果は,iPS細胞技術応用が,疾患の病態解析や創薬研究に留まらず,孤発性を含めた患者ごとの病態を事前に把握し,適切な治療介入を行なう「先制医療」にも用いることができることを示すもの。

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