理化学研究所は,「対称性の自発的破れ」に関する南部陽一郎博士の理論の適用限界をなくし,連続対称性の自発的破れに伴う自然界の「波」全体を単一の方程式で理解できる理論の構築に成功したと発表した。
ノーベル賞受賞者の南部陽一郎博士による「南部理論」は,対称性には円や球のようにどれだけ回転させても対称性を保つ回転対称性や,気体や液体のように分子がどこにあっても変わらない並進対称性といった「連続対称性」があり,これが自発的に破れると小さな変化を遠方まで伝える「波」が発生する―というもの。
しかし,従来の南部理論をそのままスピン波に適用すると2種類の波が生まれるはずだが,実際には1種類の波しか観測されない。そこで理研は,ミクロな力学からマクロな現象を導き出す「森理論」を南部理論へ融合し,スピン波では電子の回転に起因して1種類の波だけが生まれること,その伝播速度はスピンに加える力の大きさに依存することを説明することに成功した。
この理論により,南部理論では説明できなかった波でも,どのように,いくつ現れるのかを予言できる。自然界の波の性質を1つの理論だけで正確に計算し説明できるため,対称性の自発的破れの本質的理解を大きく前進させるだけでなく,新素材の物性物理や宇宙創成の理解にも貢献することが期待される。
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