セルシステム,LED可視光シミュレータ「Iris-1」を開発―スペクトル再現性±10%以内,照射距離30cmを実現―

 セルシステムは,色素増感型や有機薄膜型といった有機系太陽電池(PV)セルの測定向けにLED可視光シミュレータ装置「Iris-1」を開発,販売を行なっている。

 今年2月29日に市場発表したもので,製品化にあたっては東京大学先端科学技術研究センター教授の瀬川浩司氏と東京大学教養学部特任教授の内田聡氏の研究グループと連携し進めたという。開発した装置は東京大学や神奈川科学技術アカデミー(KAST)にも採用されており,有機系PVセルの評価測定に適用されている。また,有機系PVセルの開発を手掛ける民間企業への導入も進んでいるほか,さらに数社から引き合いの案件もあるとしている。

 Iris-1は28種32個のLEDを使用し,有機系PVセルが対象となる400~800nmのスペクトル帯域においてAM1.5に近似した分光特性±10%以内を実現しており,スペクトル合致度に優れているのが特長だ。これに関し,「東京大学とKASTに納入した装置ではスペクトル合致度を±5%以内にしている。民間企業に対しては±10%以内の装置を納めているが,現状の規格値が±5%なのでこのスペックを維持させたいと考えている」(同社)という。現在市販されているシミュレータ装置は±25%以内のスペックが多いというが,スペクトル合致度を高めることで,より精密な測定を可能にする。

 また,LED光源を使用するメリットについて,「光の強弱を任意に変えることができるので,例えば,朝や夜の光といったり,室内照明下といった様々な照明環境条件のスペクトルを再現することできる。また,使用しているLEDは単波長のため,有機系PVセルがどこの波長で反応するかを容易に把握することができる」(同社)としている。

 LED光源の寿命はキセノン/ハロゲンランプを光源とするシミュレータに比べて1桁長くなっているとし,校正の手間も少ない。さらに熱線帯域の光の放射がなく,低消費電力化も達成している。Iris-1では照度安定度が±0.5%/h以内(但し,点灯30分後経過),照射強度が53mW/cm2(400~800nm帯域だけの照度),動作温度範囲が0℃~40℃となっている。

 もう一つ大きな特長は,焦点距離が30cmと長いことだ。独自の光学設計を施した工学エンジンを開発し可能にしたもので,有効スペクトル帯域をカバーする複数のLEDを合成して均一な照射を実現した。照射面積は有効□100mmだが,300mm×300mmと大面積タイプもラインナップする。さらに「量産ライン向け大面積対応シミュレータも出荷した」(同社)という。

 現在,有機系太陽電池の性能評価に関しては,統一的な評価方法も含め規格・標準化に向けての検討が進められているが,こうした動きはLED可視光シミュレータ装置の市場拡大にもつながると期待されている。同社のLED可視光シミュレータ装置は太陽電池分野のみならず,各種産業分野での適用も想定されており,今後の展開が注目されている。


iris-1
写真1 LED可視光シミュレータ