パナソニックは,視認性が悪い夜間においても250m先にある物体までの距離情報を画像化する,アバランシェフォトダイオード(APD)画素を用いたTOF方式距離画像センサーを開発したと発表した(ニュースリリース)。
対象までの距離を検出する技術として,ステレオカメラなど従来のカメラ技術は夜間の認識精度が低下してしまうという課題がある一方,赤外線を用いたLiDARは夜間も使用できる反面,解像度が低いため小物体の特定が困難になり,検知漏れが発生するという欠点があった。
開発した距離画像センサーは,光が物体で反射して戻ってくるまでの飛行時間(TOF)を全画素で直接計測し,近距離から遠距離までの三次元距離画像を一括で取得する。入力信号を増幅するAPDを受光部に用いるとともに,微弱な入力信号を積算する演算回路を全画素に内蔵することで,従来発表されていた同様のセンサー比2倍となる250m先までの三次元距離画像化が可能だという。
従来のイメージセンサーは,画素に入った1光子は1電子にしか変換されないため,1光子程度の微弱な信号光に対しては,ノイズに弱くなる課題がある。今回,1光子を1万個の電子に増倍する増倍領域を設けつつ,光電変換領域と信号蓄積領域と同じ平面積に収まるように倍増領域を積層化することで,11.2μmピッチの微細画素を形成,従来の4倍となる25万画素の高解像と信号増幅1万倍の高感度を両立するセンサーを実現した。
さらに,近距離から遠距離までの距離レンジを一括で距離画像として取得する長距離計測画像化技術を開発した。250m先からの反射光は,1光子が届くか届かないかという確率的な信号となる。今回,光子の到達回数を数える独自の積算回路を全APD画素に内蔵,1光子の微弱信号であっても確実に捉えることができる微弱光積算技術を開発した。
また,最短10ナノ秒の短パルス光と同期して,センサーに内蔵する10ナノ秒の高速シャッタを駆動する独自の短パルスTOF方式を開発。この技術により,近距離から遠距離までの複数の距離レンジを合成し,一括で三次元距離画像を取得できる。
これらにより,従来は困難であった三次元距離画像の長距離化と高解像度化との両立に成功。従来のステレオカメラやLiDARでは難しかった,夜間における長距離計測と高解像度化を両立した距離画像を実現した。人の目には見えない夜間の遠方でも,人や小さな物体の位置や形状が判別可能な距離画像を取得できるとしている。