今年のレーザー学会産業賞が決定した。授賞式はOPIE’17会期中の4月20日(木)11:00より,パシフィコ横浜展示ホール内特設会場で開催する(OPIEページ)。産業賞は技術と市場実績の優れた「優秀賞」,市場の開拓と将来性が期待される「奨励賞」,優れた基礎的技術を有し,あるいは累積的貢献をした「貢献賞」の3つの賞で構成している。
今回,優秀賞にはリコーと三菱電機,堀場製作所が,奨励賞には三菱電線工業,ユニタックが,貢献賞には日本レーザーとレーザー技術総合研究所,レーザックスが受賞した。受賞社には賞状と副賞が贈られるほか,産業賞ロゴマークを約2年間使用することができる。以下に,今回受賞した製品・技術の概要を紹介する。
【優秀賞】
『レーザープリンター用面発光レーザー(VCSEL)アレイ』
(株)リコー
VCSELは日本で発明されたものだが,海外勢が優勢となっている中で,国産技術を磨き続けている姿勢が評価された。同社が開発したVCSELアレイは40チャンネルマルチビームで,独自に設計した活性層材料を採用し,放熱構造,偏光制御方法などを工夫することで高出力化と高い信頼性を持つ。商業印刷向けレーザープリンターに搭載され,販売実績を伸ばしている。また,同社は高出力VCSELアレイの開発にも成功しており,励起用や加工用光源などの応用が期待されている。
『光ファイバー通信用4波長集積型100Gb/s光送信モジュール:FU-401REA/-402REA』
三菱電機(株)
4つの25Gb/s通信用EML素子を一つのパッケージに集積した4波長集積型100Gb/s光送信モジュール。ポスト100Gb/s時代の本格到来に向け,競争力の高い100Gb/s小型モジュールを製品化させた功績が高く評価された。独自の低電圧,高温動作のレーザー特性を活かし,レーザーモジュールでの消費電力を大幅に減少させている。
『レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置:LAシリーズ』
(株)堀場製作所
世界初とする測定精度保証の実施など,高精度・高信頼性の高い計測装置。広範な用途で有用で,我が国のものづくりに大きく寄与してきたことが高く評価された。
【奨励賞】
『広帯域偏波保持型フォトニック結晶ファイバー(PCF)コード』
三菱電線工業(株)
フォトニック結晶技術を用いた偏波保持型光ファイバーコードで,多波長のレーザー光を同時伝送するのに適している。端面処理の問題で,研究以外の使用が困難とされてきたPCFを,顕微鏡などの一般用途へ広めた功績が評価された。ほかの波長や多機能化に対する次のファイバーへの展開が期待されている。医療・科学などの応用で事業規模は大きくないものの,今後の応用範囲の拡大で事業拡大も期待されている。
『半導体レーザー治療器:Sheep』
(株)ユニタック
筋肉・関節の慢性非感染症炎症による疼痛を緩和する半導体レーザー治療器。医療機器分野は,薬事法による規制などで難しさが多大であるが,チャレンジングにビジネス展開している姿勢が評価された。薬事認証まで取得しており,疼痛緩和以外にも生体への光照射の効果が報告されている。生体にかかわる波長選択で830nmの半導体レーザーを採用している。
【貢献賞】
『レーザー製品の輸入を通じた産業界・学術界への貢献』
(株)日本レーザー
レーザー関連の輸入商社としては国内最古で,多大な実績を持つ。独自装置の開発も手掛けており,日本のレーザー産業の発展を長年にわたり輸入販売の側面からサポートしてきた功績が評価された。
『光学素子のレーザー損傷しきい値のデータベース』
(公財)レーザー技術総合研究所
従来あいまいであったレーザー損傷しきい値を体系化してデータベース化し,一般公開している。光学素子評価に関して,国内唯一の拠点を形成しており,高出力レーザーの製品化などにおいて重要な光学部品の光耐性を客観的に評価できるシステムを構築,標準試験によるデータベースの生成,部品メーカとの研究会立ち上げによる技術の底上げを行なっている。
『ジョブショップ事業およびレーザー加工用ヘッド・周辺機器の国産ブランド「OPTICEL」によるレーザー関連産業への貢献』
(株)レーザックス
レーザジョブショップとして周辺機器の自社開発をしながらレーザー加工産業の発展に貢献していることが評価された。特許化などが可能な高度な技術ノウハウの蓄積が推定されるため,知財権に関してより積極的な活動が可能と考えられている。