京大,界面構造を変えて金属酸化物の特性を制御

京都大学の研究グループは,ぺロブスカイト構造遷移金属酸化物から構成されるヘテロ構造の界面構造をわずかに変えるだけで,薄膜特性を制御することに成功した(ニュースリリース)。これは,界面エンジニアリングによる新しい機能特性制御を実証するもの。

遷移金属酸化物は,多彩な特性を示し,機能性材料として広く研究されている。近年,原子レベルでの酸化物作製技術が進歩し,急峻に変化する界面構造を有する薄膜や異種材料を接合したヘテロ構造の作製が可能となり,酸化物薄膜の界面やヘテロ構造が新しい物性や機能特性の発現と場として注目されている。

このような遷移金属酸化物薄膜やヘテロ構造での新しい機能特性の探索や特性の制御が,基礎科学とデバイス応用展開の両面から重要な課題となっている。

今回,研究グループでは,ペロブスカイト構造酸化物SrRuO3とGdScO3との間にわずか数原子層厚さのCa0.5Sr0.5TiO3層を挿入し,ヘテロ構造薄膜の詳細な構造と特性を調べた。その結果,SrRuO3薄膜層中の酸素配位環境が,ヘテロ界面における遷移金属と酸素の結合角度で決定されていることを見出した。

また,Ca0.5Sr0.5TiO3層の厚さを原子層単位で変化させることで,SrRuO3層全体の酸素配位環境が自在に制御でき,さらにはその磁気特性も制御できることを実証した。

この研究の成果は,界面構造を介して酸素配位環境を変調させる界面エンジニアリングが,遷移金属酸化物薄膜の機能特性の制御に有用であることを示すもの。このような手法は他の遷移金属酸化物にも適用可能であり,新しい化学組成を持つ物質を合成するような従来の物質探求とは全く異なる材料開発の新しいアプローチによる新しい機能の発現も期待されるという。

研究グループでは,将来のエレクトロニクスやスピントロニクスの分野における新材料の開発にもつながるとしている。

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