東工大,ファイバーの自発的成長による配線に成功

東京工業大学は,ワイヤレス電極(バイポーラ電極)を用いた電解重合法により,導電性高分子がファイバー状に成長する現象を発見した。この現象を応用して,ワイヤレス電極間を高分子ファイバーでつなぎ,ネットワーク化することにも成功した(ニュースリリース)。

研究グループは,バイポーラ電気化学に基づくワイヤレス電極上での電解重合を検討した結果,モノマーとして用いた3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の重合体であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)がワイヤレス電極末端からファイバー状に成長する現象を見出した。

低濃度の電解質を含むアセトニトリル電解液中に独立して並べられた二つの金線の外部より交流電圧を印加し,バイポーラ電極化させた。ワイヤレス電極の両端が陽極,陰極としてそれぞれ振る舞い,その極性は交流周波数に依存し周期的に変化することから,両端においてEDOTの重合が進行した。

それぞれの金線末端から外部電場方向にPEDOTファイバーが成長する様子は,光学顕微鏡により観察可能であり,1mm間隔を約90秒で架橋した。

また,得られたファイバーの電子顕微鏡像から数μm径のファイバーを形成していることがわかった。モノマー構造を変えることで,多彩なファイバー形状を得ることにも成功した。

交流電場の印加と低電解質濃度条件が鍵であることを実証し,重合初期段階のイオン種が外部電場の影響を受けて電気泳動しながらファイバー状の重合体が析出するメカニズムを明らかにした。

PEDOTに代表される導電性高分子は有機半導体・導電性材料として有望。導電性高分子ワイヤやファイバーなどの一次元構造体は,一般にエレクトロスピニング法やテンプレート電解重合法により得ることができるものの,エレクトロニクス分野における回路の配線には不向きであり,インクジェット法によるプリント配線技術などが近年発展している。

今回研究で発見した電解重合法は,外部から電場を印加するだけの簡便な手法で,金属線末端から導電性高分子を自発的にファイバー成長させることができるため,所望の金属線間を選択的に導電性高分子ファイバーで架橋することができる。これは導電性高分子配線のエレクトロニクス応用に向けた画期的な技術だとしている。

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