SCREENホールディングスは,グラビアオフセット印刷をベースに同社独自の技術を応用し,さまざまな線幅が混在する複雑な電子回路においても,複数回の印刷を行なうことなく容易に一括形成を可能とする世界初の製版技術を確立したと発表した(ニュースリリース)。
近年,ウエアラブル端末や有機EL照明などのさまざまな電子デバイスの量産において,印刷技術を活用した,簡易かつ低コストで製造できるプリンテッドエレクトロニクスに注目が集まっている。この技術を使った回路形成には,スクリーン印刷(孔版)やグラビア印刷(凹版)を応用した方法があり,特に精密な電子デバイスの製造には,複雑で微細な回路形成が可能なグラビアオフセット印刷が適しているとされている。
しかし,この印刷方法で線幅の異なる回路を一括形成する場合,転写不良による回路の断線や不均一な膜厚が形成されてしまう可能性があるため,同一線幅の回路ごとに描き分けられた複数の印刷版を用意した上で,複数回に分けて印刷を行う必要があり,量産体制の確立への大きな課題となっている。
これを受けて同社は,これまで印刷業界で培ってきた製版技術・画像処理技術に加え,半導体・液晶関連の製造装置で定評のある表面処理技術や,プリント基板関連の直接描画技術を応用。グラビアオフセット印刷方法をベースに,世界で初めて電子回路の一括形成を可能にする製版技術を開発した。
この新技術は,電子回路の製版データ作成時にインクの材質や粘度,印圧情報を考慮し,回路の線幅に応じて最適な深度を持つ印刷版を製作するもので,回路の一括形成時における線切れや膜厚の不均一性などの転写不良を解消。プリンテッドエレクトロニクスでは難しいとされてきた生産性とコスト面での課題を一気に解決する,画期的な技術だとしている。
同社は,2016年1月までにこの製版技術を使った印刷版の商品化を予定しており,また,印刷に最適な装置開発やシステムインテグレーションなどの提供も視野に入れ,プリンテッドエレクトロニクス分野のリーディングカンパニーを目指す。
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