物質・材料研究機構(NIMS)のグループは,今年1月に中国の研究グループによって報告された特殊な超伝導状態に関する実験結果がマヨラナ粒子の存在証拠になっていることを理論的に示した(ニュースリリース)。
マヨラナ粒子は1937年にイタリアの理論物理学者E.マヨラナによって予言されたもので,フェルミ粒子でありながら,自身の反粒子と同一。素粒子としてのマヨラナ粒子は80年近く経った今でも確認されていないが,近年,トポロジカル超伝導体と呼ばれる特殊な材料の準粒子励起がマヨラナ粒子として振舞うことが理論的に指摘された。
しかし,エネルギーがゼロで,電気的に中性等のユニークな性質ゆえ,物質の中でマヨラナ粒子を捕らえることが難しく,その存在確認に向けて国際的な競争が繰り広げられている。
研究グループは,今年1月に報告された実験研究の物理的諸条件を精査し,超伝導準粒子励起について大規模かつ高精度な理論解析を行ない,実験結果と照らし合わせることによって,マヨラナ粒子がトポロジカル超伝導体の量子渦の中で捕らえられていることを理論的に示した。
さらに,マヨラナ粒子の量子力学的な特性を利用して,実験精度を上げる具体的な方法も提示した。
自身の反粒子に等価なマヨラナ粒子の集団としての振る舞いは電子や光子と異なり,強靭な量子計算機の構築に使えると考えられている。また,エネルギーがゼロになっているマヨラナ粒子のダイナミクスも非常にユニークで,さまざまな新規量子機能の創成に役立つ。
従って,マヨラナ粒子の高い精度での確認は物質・材料の科学と技術の新展開に非常に大きな波及効果をもたらすとしている。
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