NEC,量子暗号システムの評価実験を開始

NECは,理論上盗聴できない暗号技術である量子暗号の実用化に向けて国内で初めて長期のフィールド評価実験を開始した(ニュースリリース)。

サイバーセキュリティ対策の要となる同社施設サイバーセキュリティ・ファクトリーにおいて,同一フロアの異なる部屋との間でサイバー脅威情報等を暗号化して通信するための暗号鍵を「量子鍵配送」技術により供給する評価実験を,情報通信研究機構(NICT)の協力を得て実施する。

「量子鍵配送」は,量子力学にもとづき光子を使って拠点間で暗号鍵を共有する仕組みであり理論上安全とされているが,それを具体的に実現した装置が理論通り実現(実装)できているかの安全性を評価する手法の検討については,これまで着手できていなかった。

今回,NECは,量子鍵配送について,装置が理論通り実現できているかの検証を含めた安全性評価および安全性評価手法の確立を推進するとともに,より利用者に近い環境での長期評価実験を実施することにより量子暗号通信の実用化を目指す。

さらに,現在実際に利用されている暗号と量子鍵配送の統合による高速かつ高度に安全な暗号技術として,量子鍵配送装置からの暗号鍵を種鍵(たねかぎ)として使用する高速回線暗号装置の開発と評価もあわせて行なう。

高速回線暗号装置としてはNECの「COMCIPHER(コムサイファー)」を改造して使用する。この実験により量子暗号技術と現代の暗号技術の親和性を高め,利用者が必要とするセキュリティレベルに合わせた装置提供を可能とし,利用者の拡大に寄与することが期待できるとている。

この試験運用の成果は,同社も参加する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「量子人工脳を量子ネットワークでつなぐ高度知識社会基盤の実現」における2016年度以降の研究開発に引き継ぎ,より利便性・安全性の高い量子暗号システムの開発を進める予定。

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