三菱化学は,有機薄膜太陽電池を用いた「シースルー発電フィルム」を開発・実用化し,市場開拓を開始すると発表した(ニュースリリース)。価格は未定。
同社の有機薄膜太陽電池は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「有機系太陽電池実用化先導技術開発」に採択され,これまで窓や建物外装などへの使用について実証実験を進めてきた。
太陽光発電については,パネルの設置場所が限られる都市部においては,より多くの発電量を確保するために,建物の屋根や屋上面に加え,窓や壁面などを有効活用することが必須となる。しかし,窓,壁面,トップライト(採光や通風のため屋根に設置される窓)部へ設置するためには,従来の無機系太陽電池では,透明性(シースルー性),色,重量などの課題があり,対応が困難だった。
開発した「シースルー発電フィルム」は,透明(シースルー),軽量,フレキシブルという特長を有している。変換効率はモジュールで3%。同社はセルで11.7%の変換効率を実現しているが,シースルー特性を考慮してこの数値となっている。可視光の透過率は10~15%で,用途として遮熱の必要な窓への取り付けを想定している。
重さはシリコンの約1/40。1~2×7~8cmのセルが連なった構造をしており,モジュールのサイズは窓の大きさに合わせることができる(販売時は規格サイズとなる予定)。寿命については,窓の内側に貼る使用方法で5年としている。
製品化はと販売については,窓用フィルム分野について約50年の実績を持つスリーエム ジャパンと協力する。三菱化学は「シースルー発電フィルム」をスリーエム ジャパンに納入し,窓に貼れるような加工が施された後,スリーエム ジャパンの商流を経由して販売される予定。
既に製品は三菱化学のパイロットプラントである水島工場にてロール トゥ ロールにて製造されている。同社は今後,市場の状況を見ながら顧客の要望に応えるべく,太陽電池のエネルギー変換効率,耐久性をさらに向上させ,市場拡大を図っていくとしている。