岡山大,酸化グラフェンの大量合成法を開発

岡山大学の研究グループは,黒鉛から酸化グラフェンを世界最大のスケールと効率で合成する方法を開発。従来の5倍の500グラムスケールの酸化グラフェンを8時間で合成することに成功した(ニュースリリース)。

溶液中で合成できる酸化グラフェンは,既存の化学工場設備をそのまま利用することができるため,次世代材料であるナノカーボンが抱えるコスト問題の解決につながると期待されている。

しかし,実際はプロセスが煩雑であり,通常は10グラム程度のスケールで合成されることがほとんどだった。研究グループは,特別電源所在県科学技術振興事業等の支援を受け,酸化グラフェンの実用化を視野にいれた大量合成法の開発を検討してきた。

2013年には100グラムスケールでの合成を達成していたが,プロセスの煩雑性や危険性の回避が克服できておらず,それ以上のスケールアップが困難となっていた。

今回研究グループは,必要最低限の酸化剤の利用,危険な中間体の生成の抑制,精製プロセスの最適化を実施。500グラムを超えるスケールでの合成に成功した。

酸化グラフェンは,電極,触媒,水浄化,放熱,樹脂補強材,潤滑剤などの用途が見込まれている。しかし,酸化グラフェンを安全かつ大量に製造する技術がなく,実用化のための企業レベルでの検討(通常,数キログラム以上が必要)が進んでいなかった。

研究グループでは,今回の技術によりキログラムスケールでのサンプル供給が実現すれば,酸化グラフェンの実用化が一気に加速すると期待している。

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