国立天文台,東京大学などの研究者からなる研究チームは,2.3平方度にわたる天域におけるダークマターの分布を明らかにし,銀河団規模のダークマターの集中がこの天域に9つ存在することを突き止めた(ニュースリリース)。
研究チームはすばる望遠鏡に2012年に新しく搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム,HSC)を用いて「ダークマター」の分布の広域探査を進めている。今回,HSCの観測初期に取得されたデータを用いた解析からこの成果を得た。
HSCは国立天文台が国内外の諸機関と共同で開発している,すばる望遠鏡用のデジタルカメラ。 第一レンズの直径は約82cmで,レンズ筒の長さは165cm,重さは3トン。HSCは一度に広い天域を撮影することでき,新しい天体や現象を探査する研究に力を発揮する。
カメラは,レンズ・フィルタ・シャッタ・光センサで構成されている。光センサは新開発の高感度CCDで,合計約8億7000万画素を有する。CCDは真空容器に封入され-100度に冷却される。ピント合わせなどの位置調整は特別に開発された6本の精密機械式ジャッキで行なう。
今回の観測結果は現在の宇宙モデルに基づく予測よりも多いものだが,たまたま宇宙の平均よりダークマターが密集した天域を観測した結果なのか,或いは過去においてダークエネルギーが期待されていたほど存在せず,緩やかな宇宙膨張のなかで天体形成が早く進行した結果なのかは明らかになっておらず,この解明には,今後のより広い天域での観測結果を待つことになる。
研究チームは今後,最終的には観測天域を1000平方度以上に広げ,ダークマターの分布とその時間変化から宇宙膨張の歴史を精密に計測するという課題に取り組む。
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