光創成大ら,核融合燃料をレーザで2000万度に加熱

光産業創成大学院大学と大阪大学の研究チーム(11研究機関:浜松ホトニクス,トヨタ自動車等)は,大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの世界最大のペタワットレーザ「LFEX」を用いて,核融合燃料をおよそ2000万度に加熱することに成功した(ニュースリリース)。

そしてレーザ核融合方式の中で先進的といわれてきた「高速点火方式」での,世界最高の核融合中性子数を更新した。これは,核融合燃料の点火にさらに一歩進んだと共に,高速点火方式の将来性を示したもの。

太陽エネルギーの源である「核融合」エネルギーを地上で実現しようという試みが,世界各国で精力的に行なわれている。大阪大学は,これまで,レーザ方式による核融合研究開発の国内拠点として,大型レーザ建設を推進してきた。2009年に建設されたLFEXを用いた成果として今回,研究チームは,レーザ核融合燃料を超高強度レーザで作る「高速イオン」で加熱できることを実験的に見出した。

レーザで「人工太陽」を形成するためには,核融合燃料を太陽中心以上に圧縮し,同時に燃料の温度をあげる必要がある。光産業創成大学院大学は,緑色の爆縮用光レーザ2ビームで燃料コアを形成し,その直角方向から赤色の加熱レーザを直接に照射加熱することで,加熱前とくらべて1000倍の核融合反応の増大を確認し,爆縮コア温度が2000万度近くに達していることを示した。太陽中心の温度が1500万度といわれているので,今回の成果は,高速点火方式で太陽中心温度を越えたことになる。

核融合反応の増大には加熱温度上昇が必須だが,そのための外部からエネルギーを運ぶ媒体として,高速電子だけでなく高速イオンも寄与させれば良いのではとの指摘は,実験的に明確に実現はされていなかった。今回その”高速イオン”と呼ばれるものが主要な役割を果たすことがあきらかになり,高速点火の可能性がさらに高まった。

今回の成果は,浜松ホトニクスの高繰り返しLD励起固体レーザと核融合燃料ターゲットを用いておこなった爆縮加熱研究成果をもとに提案されたもの。レーザ核融合方式の中で先進的といわれてきた「高速点火方式」(外部注入した超高強度レーザで追加熱する方式。このレーザは高速電子とともに実は高速イオンをもプラズマ中で同時に生成する)に,従来想定してきた加熱媒体「高速電子」に加えて,加熱媒体「高速イオン」が寄与しうることを実験的に世界に先駆けて証明した。

加熱前に800万度だった核融合燃料を,電子ビームだけでは200万度しか追加熱できないのが,高速イオンでさらに800万度追加熱でき,合わせて2000万度近くを達成できることを見出し,高速電子と高速イオンを利用することで高速点火が一挙に実現性を持ったと期待される。

核融合燃料に火をつけるためには,温度5000万度が必要だと言われている。今回の成果は,LFEXレーザの半分の性能である2ビームを照射して達成されたものであり,今後フルパワーの4ビームで同等の実験を行なった場合,“高速イオン”を活用した点火温度に近づくさらなる爆縮コア加熱が期待できるとしている。

関連記事「NIFS,核融合に向けた3つの成果を発表」「原研,国際熱核融合実験炉の磁場コイルに用いる高性能超伝導導体を作製」「NIFS,1億度に迫るイオン温度9,400万度を達成など核融合研究を更に前進