京大ら,太陽以外でも巨大黒点がスーパーフレアを起こすことを発見

京都大学,兵庫県立大学,国立天文台,名古屋大学の研究者からなる研究チームは,恒星表面の超巨大な爆発現象「スーパーフレア」が見つかった太陽型星のうち50天体を,すばる望遠鏡を用いて観測した。得られたスペクトルを詳細に分析した結果,太陽とよく似た星でも巨大黒点が生じれば,スーパーフレアを起こしうるということを突き止めた(ニュースリリース)。

研究チームはこれまで,太陽系外惑星探査衛星「ケプラー」の観測データを解析することにより,スーパーフレアを起こした太陽型星を多数発見してきた。すばる望遠鏡を用いた今回の観測により,スーパーフレア星のより詳しい正体に迫ることができた。

太陽フレアは,太陽の表面の黒点に蓄えられた磁場のエネルギーが一気に放出される爆発現象で,この時,大きなフレアでは太陽から大量の放射線(X線や紫外線,高エネルギー粒子),コロナ質量放出と呼ばれる高速プラズマ雲が放出される。大きなフレアで放出されたプラズマ雲が地球磁気圏に衝突・侵入すると,巨大な磁気嵐を引き起こす可能性があり,過去には通信障害や大規模停電などの被害へ繋がった事例が報告されている。

これまで研究チームでは,ケプラー衛星の観測データを解析することにより,太陽型星でスーパーフレア(最大級の太陽フレアの10倍~1万倍に達するような超巨大フレア)を多数(100例以上)発見してきた 。しかし,スーパーフレアを起こした星の正体に迫るには,更に詳しい観測が必要だった。

そこで今回,研究チームでは,ケプラー衛星でスーパーフレアの見つかった太陽型星のうち50星について,すばる望遠鏡の高分散分光器HDSを用いた分光観測を行ない,そのスペクトルの詳細な分析を行なった。その結果,以下のことが明らかになった。

1.観測した50天体のうち半数以上は,連星系などの証拠もなく,太陽とおおむねよく似た星である。
2.ケプラー衛星の観測データから,多くのスーパーフレア星は表面に大きな黒点があり,それが自転に伴って見え隠れすることで明るさの変化が生じていると予想されていた。分光観測によって,スペクトル線の広がり幅から星の自転の速さを測定する事ができるが,今回の観測の結果は,明るさの変化から求めた自転の速さとよく対応しており,上記の予想が正しいことが確認された。また太陽のように自転の遅い星も多く含まれていた。
3.大きな黒点が存在して星表面の平均磁場が強くなると,Ca II 854.2nm(電離カルシウム)の吸収線が浅くなることが知られている。このことを応用し,スーパーフレア星の Ca II 854.2nmの吸収線の深さを測定したところ,スーパーフレア星は太陽と比較して,非常に大きな黒点を持つ事が示唆された。

以上の結果は,「太陽とよく似た星も巨大黒点が生じれば,スーパーフレアを起こしうる」ということを提起していると言える。研究チームでは,今後も引き続きすばる望遠鏡での観測を続けるとともに,京都大学を中心に現在建設を進めている京大岡山3.8m望遠鏡も使って,スーパーフレア星の性質や長期的な活動性の変化をさらに詳細に調査し,巨大なフレアが起こる条件や兆候を追究する予定。

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