人類の歴史上最大の宇宙地図を作っているスローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)は,これまでの14年間にわたる観測を通して数多くの成果を挙げてきたが,今回,新開発の機器を導入してさらに詳細,広範囲の観測を行う新たなフェーズ(SDSS-IV)に入った(ニュースリリース)。
今回始まった観測プロジェクトのひとつ,MaNGA(Mapping Nearby Galaxies at Apache Point Observatory; アパッチポイント天文台近傍銀河地図作成)では,研究チームは光ファイバを正確に配列して束ねる新しい技術を開発した。
さらに,これを米国ニューメキシコ州のスローン財団2.5m望遠鏡の既存の機器と組み合わせ,新たな観測手法を実現した。これまでのほとんどの観測では,ひとつの銀河から1点の分光観測結果を得られるだけだったが,MaNGAの観測では,ひとつの銀河の最大127点を同時に分光観測できる。
この新しい装置を使い,研究チームは6年間で10,000個以上の銀河の観測を予定している。これは,これまでの装置で行なった場合の20倍の速度に相当する。これにより,銀河の中の星とガスの分布図を作り,何十億年もかけて形成された銀河の成長の仕組みの解明に挑む。
SDSSには,世界各地の40以上の研究機関から200名以上の研究者が参加している。MaNGAの他にも,北半球にあるスローン財団望遠鏡では観測できない領域を観測するため南半球であるチリの望遠鏡も用い,天の川銀河全体の星の運動を詳細に観測するAPOGEE-2プロジェクトも開始した。
さらに,宇宙誕生30億年後までさかのぼって膨張の様子を詳細に測定し,現代物理学の最も大きな謎のひとつ,暗黒エネルギーの正体解明に迫るeBOSSと呼ばれるプロジェクトも始まっている。
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