中大,CNTを使った半導体メモリNRAMの・高速・低電力・高信頼な基本動作を実証

中央大学研究のグループは米Nantero社と共同で,カーボンナノチューブ(CNT)を用いた半導体メモリ(NRAM)に最適な書き込み方法を提案し,140㎚サイズの単体の素子の測定を行ない,高速,低電力,大容量,高信頼な基本動作を実証した(プレスリリース)。

NRAMはNantero社が提案した新しい半導体メモリで,電圧印加や微小な電流を流すことで,CNTが接触(低抵抗化),分離(高抵抗化)することで,データを記憶する。今回,NRAM素子で構成されるメモリセルアレイにおけるばらつきや揺らぎに対して,メモリセルに印加する電圧を段階的に増加させることで安定に書き換える手法を提案し,20ナノ秒の短い書き込みパルスで,20マイクロアンペア以下という高速かつ低電力な書き換えを示した。

また,書き換え時には100倍以上の大きな抵抗の変化が得られた。大きな信号変化を得られたことで,1つのメモリセルに複数のビットを記憶する,大容量なMLC(多値記憶)動作が可能になると考えられる。さらに,信頼性に関しては1,000億(10の11乗)回の書き換えが可能であることを示した。

従来のフラッシュメモリは書き換え回数が1万回程度という制約があり,用途はデータを長期間保存するストレージに限られていた。今回のNRAMの書き換え回数は,フラッシュメモリの1,000万倍に相当し,NRAMがストレージのみならず,メインメモリとしてDRAMを置き換える可能性を示唆している。

今回の評価結果は,140㎚という大きなサイズで単体の素子を測定したもので,NRAMをLSIとして実用化するためにはごく初期段階の結果にすぎない。実用化に向けては素子を10㎚まで微細化し,ギガビット以上の統計データを評価することが必要になる。

今回の実験結果は開発のごく初期段階のものだが,将来NRAMが「ユニバーサルメモリ」としてメインメモリ(DRAM)からストレージ(HDDやSSD)まで様々なメモリを置き換え,スマートフォンから企業向けサーバーまで,幅広いIT機器の高速化,低電力化,高信頼化に貢献する大きな潜在力があることを示すものだとしている。