NICT,「きずな」で世界初の4K超高精細映像非圧縮伝送に成功

NICTは, 超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)搭載中継器の1.1GHz伝送帯域内に16波の16APSK多値変調信号を,周波数多重化(16APSK-OFDM)することによって,打上げ時の「きずな」の通信容量の約5倍となる世界最高速3.2Gb/sの衛星伝送を実現した(プレスリリース)。

さらに,NICTが研究開発した「マルチチャネル映像伝送コーデック」を使い,「きずな」のIP衛星伝送プロトコルを組み込むことにより,世界初の4K超高精細映像非圧縮伝送にも成功した。

NICTは「きずな」を使用して高速衛星通信の研究開発を行なっており,4年前には、「きずな」搭載中継器の1.1GHz帯域幅を最大限使用し,単一搬送波による伝送速度1.2Gb/sに成功した。しかし,更なる広帯域化の実現には単一搬送波方式では限界があり,新たな通信方式による研究開発が必要だった。

今回,16APSK-OFDM(16値振幅位相変調・直交周波数多重方式)によるRF信号ダイレクト変復調方式を用いた。16APSK多値変調の信号を周波数多重化(16波)することで,1波当たりの周波数帯域幅を狭くし,群遅延特性の歪みによる影響を小さくした。

また伝送路の振幅周波数特性歪みに対して,各波のEs/Noが平均化されるように補正することによって,信号誤り率(ビットエラーレート)を向上させた(測定結果が 6.12×10-3 を達成)。

これにLDPC 誤り訂正機能を加えることによって,準エラーフリー(BER 1.0×10-11 以下)を実現し,3.2Gb/sの広帯域伝送に成功した。

今回の成果により,「きずな」大型車載地球局により,被災地の状況や負傷者の負傷箇所を4K超高精細映像で迅速に災害対策本部等に伝送することや遠隔地の専門医に医療情報を的確に伝える遠隔医療への活用が期待される。

また,4K圧縮映像の30チャネル程度の同時伝送の実現についても期待される。NICTでは,周波数資源の一層の有効利用を進めるため,同一周波数帯域を使った更なる広帯域伝送(例えば4.8Gb/s)の実現に向けた検討に取り組む。