東京大学とアメリカ合衆国High Altitude Observatory(高高度観測所)の研究グループは,独自の新しい数値計算法「音速抑制法」を用いた効率の良い計算コードプログラムと,理化学研究所のスーパーコンピューター「京」により,太陽の熱対流計算を世界最高解像度(従来の6倍以上の解像度)で達成した。太陽対流層は,その中心部で核融合により発生したエネルギーを輸送するために乱流的な熱対流によって埋め尽くされている。この乱流を数値シミュレーションにより再現することは,差動回転といった大規模な流れ場や磁場の生成を理解するために重要となる。
しかし,太陽の大きさを考えると,小規模の乱流を数値計算によって再現することは多くの格子点を要するために難解な問題となっている。大規模化したスーパーコンピューターであっても,これまで使用されていた「アネラスティック近似」というこれまでの手法では,2008年時点での太陽の熱対流を計算した結果が世界最高であるという足踏み状態であった。
この計算により得られた太陽内部の熱対流と磁場生成のモデリングにより,対流層の底が磁場生成に最適の場所であることを明らかにした。今後は,実際の太陽と比較し太陽の自転もとりいれつつ計算を進めることで,大規模流れ・黒点磁場生成機構の解明が可能になると期待される。また,太陽活動11年周期の謎の解明や太陽活動の変動の予測について世界で最も優れた方法の提案でもある。
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