東北大ら,高い電気伝導性を持った3次元グラフェンの開発に成功

東北大学の研究グループは,新規材料「3次元ナノ多孔質グラフェン」の開発に成功した。これまで3次元炭素材料は非結晶性不連続体(粉状)のため電気をほとんど通さなかったのに対し,今回結晶性の高い1枚の繋がった3次元グラフェンシートを作成することで高い電気移動度を達成した。

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グラフェンはよく電気を通す2次元シート材料としてシリコンや貴金属の代替品として有望視されている。しかし,2次元シートであるため応用用途に制限があり,体積換算した性能値が他の炭素材料よりも劣っているという問題がある。このため,2次元シートであるグラフェンに3次元構造を持たせようと様々な試みがされている。

近年,現在商品化されているカーボンブラックよりも表面積が広く,かつ,高性能な材料が実験室レベルで開発されている。しかしながら,それらの物質は結晶構造に乏しく,不連続体(粉状)のため電気が流れにくいという欠点があり,電気デバイスに応用するには1枚の連続した結晶性が高いシートであることが必要とされている。

研究グループは,化学気相蒸着法を用いてナノ多孔質ニッケルの表面にグラフェンを成長させることによって,ナノ多孔質ニッケルの幾何学構造を維持した3次元ナノ多孔質グラフェンを作成した。

このグラフェンについて調べたところ,その3次元構造は2次元グラフェンの特徴を引き継いでいることがわかった。この成果は3次元ナノ多孔質グラフェンの物性を初めて解明した非常に有意義なもの。

この3次元ナノ多孔質グラフェンは体積あたりの性能を劇的に向上させる可能性を秘めている。これまでの2次元グラフェンを重ねたグラフェンには多孔質構造がなく,内部への分子やイオンの出し入れも出来ないために連続的な化学反応も起こせないが,今回の多孔質グラフェンを使用すれば内部への物質輸送は非常に円滑であり,化学反応を促進することが出来る。

また,平面が3次元的に滑らかに繋がったグラフェンは2次元グラフェンの性質を受け継いでいるため電気デバイスとして活用が可能。また,電気を良く通すという性質があるため、金属を担持することで触媒として作用する可能性もある。

研究グループでは,今後この3次元ナノ多孔質グラフェンの3次元構造と導電性を活用して,多孔質体の中にイオンを詰めてトランジスタ機能やコンデンサ機能を付加したり,高効率エネルギー創出の電極触媒(水素発生反応,酸素発生反応など)としての可能性を検討する予定。

詳しくは東北大学 プレスリリースへ。