神奈川科学技術アカデミー(KAST)と横浜国立大学,長岡科学技術大学は,高い熱伝導率をもつ窒化ケイ素セラミックスの開発に成功した。これは,超伝導磁石を用いた「磁場配向技術」と,窒化ケイ素セラミックスの高緻密化焼結技術を組み合わせたプロセスによる,厚さ方向に高熱伝導率を示す窒化ケイ素セラミックス。
市販されている窒化ケイ素セラミックスの熱伝導率は85~95W/m・K程度(放熱基板用の窒化ケイ素セラミックスの場合)だが,開発した窒化ケイ素セラミックスは従来品の約2倍に近い149W/m・Kという高い熱伝導率を達成した。
窒化ケイ素の熱伝導性を向上させるためには,熱の伝導を妨げる要因(粒子間の隙間である気孔や界面である粒界,結晶粒子中に取り込まれた酸素など)を取り除くと共に,窒化ケイ素の熱伝導性は結晶の方向で異なることを利用し,放熱方向に窒化ケイ素粒子の高い熱伝導性持つ方向を揃えることが必要。
研究グループでは,窒化ケイ素粒子をそろえる方法として,今回は磁力を利用したプロセスを選択した。従来の窒化ケイ素セラミックスの熱伝導率は,多くは20~30W/m・K,放熱基板用でも85~95W/m・Kだったが,開発した窒化ケイ素セラミックスの熱伝導率149W/m・Kは,窒化アルミニウムとほぼ同等で,窒化ケイ素セラミックスの中では非常に優れている。
さらに,窒化ケイ素セラミックスの高熱伝導率化のためには,高温かつ長時間(現在世界最高値の熱伝導率をもつ窒化ケイ素セラミックスでは、1900℃で60時間)の焼成が必要だったが,今回の開発品は1900℃で6時間の焼成で高い熱伝導率が達成可能であり,製造面でも実用化の可能性は高い。
今回開発した高熱伝導性窒化ケイ素セラミックスは,電気自動車をはじめあらゆる電気機器の電力変換素子として期待されているSiC等大電流パワーモジュールの放熱基板として利用されることが期待される。
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3月10日 開発者を一部訂正しました