名大ら,太陽風が吹き渡る太陽圏の姿を世界で初めて再現

名古屋大学,米国アラバマ大学ハンツビル校,米国スタンフォード大学,九州大学,情報通信研究機構の研究グループは,名古屋大学太陽地球環境研究所(STE 研)が実施している長期間の太陽風観測データに基づき,大規模な計算機シミュレーションを実施することで,太陽圏の3次元構造を精密に決定した。その結果,いくつもの波動が太陽風中を伝搬しているダイナミックな太陽圏の姿が明らかになった。

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地球には銀河から宇宙線と呼ばれる高エネルギー粒子が飛来しているが,その伝わり方は太陽圏中の磁場構造により大きく変わる。この磁場構造を太陽風の吹き方が決定している。また,太陽風は地球に常時吹き付けており,周辺の宇宙環境や超高層大気にも大きな影響を与えている。太陽風の吹き方は場所や時間により変化し,太陽圏には複雑な構造ができるが,太陽風の生成機構が未解明なためシミュレーションによって太陽圏の構造を精度よく再現できなかった。

研究グループは,STE研で長期にわたり取得している太陽風データを用いることで,従来困難であった太陽圏構造の精密決定を可能にした。STE研の太陽風データは天体電波源の“またたき”現象(惑星間空間シンチレーション)を利用したもので,太陽面上のすべての場所における太陽風の吹き方がわかる。

また,この観測は長期にわたって実施されていることから,太陽風の吹き方が時間と共に変化しているのも忠実に再現することができる。解析結果から,太陽圏中にいくつもの波動が伝搬している様子が明らかとなった。この波動の3次元的な分布を明らかにしたのはこれが初めて。

この研究により,銀河宇宙線の伝搬や進行中のVoyager探査機による太陽圏の境界域に関する研究にとって重要な知見となる。また,この研究成果を応用することで地球に到来する太陽風を精度よく予報することができるようになり,宇宙天気予報の改善につながる。

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