東大、MRSAが高病原性化する分子メカニズムを発見

東京大学大学院薬学系研究科准教授の垣内力氏の研究グループは、市中分離型MRSAが高病原性を持つ分子メカニズムを初めて解明し、さらに、病院分離型MRSAが高病原性化する危険性と、その迅速な検出の可能性を示唆した。

市中分離型MRSAには存在せず、病院分離型MRSAには存在するpsm-mec遺伝子に着目し、この遺伝子から転写されたRNAが黄色ブドウ球菌の細胞外毒素の産生に必須な役割を果たす転写因子の翻訳を抑制することを見出した。また、人為的にpsm-mec遺伝子を失わせた病院分離型MRSA はマウスに対して高病原性を示すこと、人為的にpsm-mec遺伝子を導入した市中分離型MRSAはマウスに対する病原性を減弱することが明らかとなった。

すなわち、病院分離型MRSAにおいてはpsm-mec RNAが病原性発現を抑制している一方、市中分離型MRSAにおいてはpsm-mec RNAが発現しないために、病原性抑制機構が破綻し病原性発現が亢進していると考えられる。

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さらに同グループは、日本の関東地域の病院から325株の病院分離型MRSAを収集し、その約30%bがpsm-mec遺伝子に変異を有し、psm-mec RNAの発現を失っていること、並びに、これらのpsm-mec遺伝子変異株では細胞外毒素の発現量が増加していることを見出した。

本研究から、市中分離型MRSAの高病原性の原因がpsm-mec RNAの不在であること、病院分離型MRSAの中にもpsm-mec RNAの発現低下により高病原性化している株が存在することが示唆された。psm-mec遺伝子変異の検出は、高病原性型MRSAの迅速な検出と治療指針の確立に役立つと期待される。

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