東京農工大学と日本大学は,化学反応前後の流体の物性値だけでは予測できない,高分子溶液の流動があることを,ATR-FTIRを用いて発見した(ニュースリリース)。
気体,液体によらず,化学反応によって流体の物性が変化することで,流動も変化する。そのため,これまでは反応前後の流体の物性値を比較することで,化学反応が流体力学に及ぼす影響を予測できることが常識だった。
例えば,反応前後で粘度が減少するのであれば,流動中の粘度も減少すると考えられ,逆に反応前後で物性値の変化がなければ,化学反応は流体力学に影響を及ぼさないと考えられていた。
今回の研究では,液体の粘度が,化学反応によりわずかに減少するにもかかわらず,一時的に粘弾性が著しく増加していた反応メカニズムの解明のために,超低濃度,超高分子量の高分子水溶液における赤外分光測定に挑み,これをATR-FTIR法により成功させた。
これにより,一時的に電荷の高い分子が主成分となることで,分子間の電気的な架橋によって見かけの分子量が増加し,粘弾性が増加していたことがわかった。今回の研究は,マクロな流動の理解に,ミクロな分子構造変化の解明が必要となる高分子溶液反応流の存在を実証したことになるという。
研究グループは,今回の成果は,分子を診る反応系流体力学という新しい学問分野の創出につながり,新たな反応器設計の枠組みの提案や新たなレオロジーコントロール(流体の粘度,弾性などの流動性にかかわる物性を制御し,それを種々のプロセスで活用する)法の創出といった工業上の応用が期待できるとしている。