ショットはロール・トゥ・ロールプロセスによるフレキシブルデバイスの基板材料として期待の高い,超薄板ガラスについて開発状況を発表した。
同社は市場の将来性を見越して超薄板ガラスの開発を進めてきたが,今回, 従来の30μmを上回る,最薄25μmの薄板ガラスの量産技術を確立した。製法には一般的なフロート法より薄板化が可能だとする,溶融ガラスを上方から垂らし圧延しながら薄板化するダウンドロー法を採用している。
この製法により,厚さ25㎛の薄板ガラスを実現できるだけでなく,研磨を必要とせずに,ファイヤーポリッシュ処理済の粗さ1nm未満の表面を得られる。さらに,ガラス種の変更が容易な点も長所だとしている。
シート幅も従来の600mmより拡大し640mmとすることで,第4世代ガラスや12インチウェハを2枚並べて行なうプロセスにも適用できる。長さは10~500mを標準品としてラインナップするが,1kmの超長尺や枚葉にも対応する。
ロール・トゥ・ロール向け超薄板ガラスは他のガラスメーカでも研究・試作が始まっている。こうした企業の多くはFPD向け基板ガラスから研究開発をスタートしており,より幅広のガラスを製造する技術を持っている場合もあるが,薄さにおいてはダウンドロープロセスを用いる同社が有利だとしている。
同社は有機EL照明や有機薄膜太陽電池をはじめとする,プリンテッドエレクトロニクスにこのガラスを適用したい考えだ。しかし現在,ガラス基板によるロール・トゥ・ロールを用いてフレキシブルデバイスの量産を実現したという例は見当たらない。先日,コニカミノルタがロール・トゥ・ロールによる有機EL照明の量産をこの秋から始めるとアナウンスしたが,こちらはプラスチック基板を用いたものだ(関連記事)。
超薄ガラス基板をロール・トゥ・ロールに適用するのに問題となる点について同社は「やはりガラスなので割れる」(ショット日本:杉山公一氏)点を挙げている。今回発表した25㎛の超薄板ガラスの曲げ径は10mmを実現しているが,それでもハンドリングや切断時における割れやクラックの問題は依然として残っているという。
同社では超薄板ガラスの加工・ハンドリング技術が確立されないと市場は立ち上がらないと考えている。そこで超薄板ガラス基板を検討する企業に対し,ハンドリングを容易にするために厚みのあるガラス板の上に乗せて出荷したり,加工の方法や既存設備で最善のパフォーマンスを出す為のアドバイスなどもしている。
材料を供給するだけでなく,顧客とラインの構築から関わることで自らもノウハウを蓄積し,3~5年ほどの長めのスパンを見ながら,超薄板ガラスを用いた新しいアプリケーションを開発することで,自ら市場の立ち上げを狙う。
こうした戦略の一環として同社は,この超薄板ガラスをはじめとする同社の機能ガラスを展示するショールームを,東京都新宿区のショット日本本社内に今年3月にオープンした。ガラスを用いたアプリケーションを検討する企業であれば,事前連絡にて見学することができる。下のビデオでショールームの様子を見ることができる。