東京モーターショーにおいてスタンレー電気は,アダプティブ・ドライビング・ビーム(ADB)技術として,300セグメントのLEDアレーを用いたヘッドランプユニットのデモ展示を行なっている。
ADBとは,ハイビーム使用時に対向車や歩行者を検知すると,配光を制御してその部分の光をカットし,相手の眩しさを抑えるというもの。ハイビームのまま走行が可能になることから多くの車種で実用化が始まっている。
現在のところADBを実現する技術として,ヘッドランプの光を機械式のシャッターのより遮るものと,LEDヘッドランプをいくつかのセグメントに分割し,点灯パターンを変化させるものとがあるが,機械式はシャッターの動作スピードが遅いことや,細かな配光が難しい,長期信頼性といった問題があった。
また,LEDに関しても同社はマツダCX-5向けに4セグメントのLEDヘッドランプシステムを供給しているが,このセグメント数だと「対向車が連続して来ると,ハイビームがカットされっ放しになることがある」(同社技術者)という。
海外製ではアウディが25セグメントのLEDヘッドランプによりより高度な配光をしており,これを凌ぐ技術を目指したものとなる。セグメントが増えれば,対向車の運転席や歩行者の顔だけを狙った照明のカットが可能になるため,それだけ広い視野が確保できるようになる。
開発したアレーはLEDが6×50に配置されており,左右に大きく配光を制御することができる。そのため,対向車や歩行者への防眩効果だけでなく,山道などでは左右に進行方向を明るく照らすコーナーリングライトの役目も果たす。
シーケンシャルな制御が可能なので,メカレスながら滑らからに配光を変化させることができ,視認しやすい視界を確保できる。この技術により常にハイビームでの走行が可能になると共に,ロービームにレーザーヘッドランプを組み合わせれば,視界はさらに広がることが予想される。
同社ではこの技術について,具体的な製品化の計画は無いとしながらも「今後,さらにレーザーがヘッドランプのメインとなるのか,それともLEDがディファクトスタンダードとなっていくのか,見極めながら開発を進めたい」(同社技術者)としている。