自動車のヘッドランプはLEDの性能向上とともに,進化を遂げてきた。既に多くの車種でLEDヘッドランプの採用が進み,一つの大きなトレンドとなっている。
一方で,ヘッドランプメーカはさらに“次”のヘッドランプの開発にも着手している。レーザーヘッドランプである。現在開催中の東京モーターショーにおいて,小糸製作所とスタンレー電気がレーザーヘッドランプを出展した。2年前の開催ではコンセプト品としてモックアップの出展にとどまっていたが,今回は実用化を想定した試作品を披露した。
両社に共通するのはハイビーム用に3個,ロービーム用に3個の合計6個の白色レーザーの搭載と樹脂に光ファイバーを埋め込みRGBレーザーによってカラー配光するランプデザインになっていることだ。
小糸製作所はそのランプに,さらに赤とアンバー色を照らす透明有機ELパネルを24枚組み込んだ。また,この透明有機ELパネルを搭載したテールランプの試作品も公開した。一方,スタンレー電気も透明有機ELパネルを採用し,上下に21枚のパネルを配したテールランプを開発している。現状の輝度や光束の数値は明らかにしていない。
レーザーヘッドランプの採用は2020年頃から始まると見られている。現在,アウディやBMWがレーザーを採用したヘッドランプを実用化しているが,ハイビームの補助光として用いられている。
レーザーヘッドランプのアドバンテージはLEDに比べ,より遠方の照射を可能にする点だ。さらに「レーザーを採用することで照明デザインの自由度はさらに増す。また,自動車の省エネ化や軽量化にも貢献する」とスタンレー電気 設計技術センター・システム技術課・課責長の深澤勝利氏は語る。
実用化にはコストとともに,放熱問題という解決すべき技術課題もある。また,法規の整備も待たなければならない。いずれにしてもレーザー採用によるヘッドランプのインテリジェント化に向けた開発がスタートをきった。レーザーヘッドランプは自動車メーカも高い関心を寄せていることから,今後の開発の行方に注目したい。