アプリケーションの現状と光学製品への応用の可能性
3Dプリンタは試作用途で利用されるケースが多く,国内では自動車・家電分野や精密金型・鋳造分野などで利用されているが,試作用途では製品化を検討するうえでその期間を短縮できるといった優位性がある。一方で取り上げられるのは最終製品が作れるのかだが,実際には難しいところがある。
例えば,光学製品はどうだろうか。実際,「3Dプリンタを使ってレンズを造れないだろうか?」というニーズが3Dプリンタメーカに持ち込まれているという。
ルーペとしての機能を持たせた造形品(写真1)を造ることは可能だが,高精度・高機能性がシビアに求められるレンズを造形するのは現時点では不可能とされている。寸法精度など様々な問題があるが,積層造形特有の屈折が発生するためだ。
3Dプリンタは従来の切削や成形加工法では作製することが難しい複雑,あるいは特殊な形状を作ることができ,付加価値の高い製品製造への応用が模索されている。写真2〜6に造形例を示すが,特に今後は医療分野での応用展開が期待されている。
インプラントや治療用クラウン・ブリッジといった歯科技工分野では従来より活用されているが,患者一人ひとり歯の形状やサイズが異なるため,3Dプリンタによる造形が有効とされている。
また,補聴器や義足など,これも個人のサイズや形状に合わせた活用でメリットがあるほか,患者のCTデータを元に内臓や骨など質感を似せた造形モデルの作製にも利用され,この造形モデルを使って手術シミュレーションの実証実験が進んでいる。
こうした造形にはハイエンドタイプの3Dプリンタが用いられている。3Dプリンタを活用するアプリケーション開発や事業化には,それなりの投資が必要なのは言うまでもない。