日本電気(NEC)は,レーザ光源を搭載したデジタルシネマ向け4K(4096×2160ドット)対応レーザプロジェクションシステムを開発した。
システムはプロジェクションヘッドと光源ユニットで構成されており,RGB光源を個別に光ファイバで伝送させ,3枚のTexas Instruments社製DMD(Digital Micromirror Device)を用いて映像を作り出す。光源は赤色(640nm)と青色(464nm)は半導体レーザだが,緑色(532nm)はSHGレーザとなっている。
レーザを光源とするプロジェクタは既存の高圧水銀・キセノンランプ,LEDと比べ,出力のコントロールがしやすいこと,エテンデューが小さいため光の利用効率が高いといったメリットがある。また,色再現性に優れ,色域を広げることができるとともに,低消費電力化,長寿命化も享受できる。
NECが開発したシステムの輝度は5,000 lmで,既に一部のユーザに販売を行なっており,価格は2,500万〜3,000万円としている。
参入メーカによる超小型から大型までレーザを光源とするプロジェクタの製品化は活発で,また4K対応の開発も進んでおり,民生から産業分野での利活用が期待されている。
4K化が進むと予測されるデジタルシネマ市場
調査会社のシード・プランニングによれば,2012年以降,デジタルシネマのスクリーン数が急速に拡大し,2020年は90%がデジタルシネマになると予測。さらに4K対応も進むとみられ,2020年には世界の全クリーン約15万のうち,8万スクリーン程度が4Kになると推定している。
レーザを光源とする4Kプロジェクションシステムの導入例もある。この9月に米国クリスティ・デジタル・システムズが,シアトルにある映画館より4Kレーザプロジェクションシステムを受注している。米国FDAの認可を受けて納入するものだ。
安全規制の緩和が普及のカギ?
レーザを光源とするフロントプロジェクタの製品化を巡っては,製造者や使用者に対する安全規制がある。国際電気標準会議(IEC)によるIEC60825がそれで,日本ではJIS C6802において規定されている。
現在,レーザを光源とするフロントプロジェクタはクラス3Rに分類されているが,来年にも既存のランプやLEDの安全規格が適用される見通しだという。規制が緩和されれば,一般への販売が可能になるだけに広く普及が進むものと期待されている。