ナノファイバは,電界紡糸法(エレクトロ・スピニング法)を用いて作る。これはシリンジに入ったポリマー溶液とアルミ薄膜間に高電圧を印可することで,シリンジから押出された溶液が電荷を帯び,細かな繊維となってアルミ薄膜に付着するという方法で,他の方法と比較すると簡便かつ常温・常圧で紡糸が可能なことから注目を集めている。
具体的にはアルミを蒸着したPETフィルム上に,電界紡糸法によってナノファイバのネットワークをランダムに堆積し,熱処理した後にエッチングでナノファイバに覆われていない部分のアルミを落とす。その後,ナノファイバを除去すればPET上にネットワーク状のアルミ電極が残るというもの。ナノファイバは連続した一次元構造のため,銀ナノワイヤの様な断線部分が存在せず,銀や銅メッシュのようにパターンの連続性も無い,導電性の高いネットワークがPET上に形成できる。
今回開発した方法で優れているもう一つの点は,ナノファイバを作り続ける紡糸時間と,ナノファイバの太さ(ポリマー溶液の濃度)をパラメータとしてコントロールすることで,作製するネットワークの密度をコントロールできることだ。紡糸時間が長いと密度の高いネットワークとなる。この場合,作成したPETフィルムの抵抗は低くなるが,一方で光の透過率は落ちる。ただし,ナノファイバを細くすることで,同じ紡糸時間であっても透過率が向上すると共に,抵抗も低くなることが分かっており,ナノファイバの更なる細径化が今後の課題となるという。
グループでは様々な条件で実験を行ない,ネットワークの線幅500nmのとき,表面抵抗率45Ω sq-1で光を80%以上透過する,実用的かつフレキシブルな透明電極シートの作成に成功した。この技術はタッチパネルや太陽電池などへの応用はもちろん,基板や導電層の材料に殆ど制限が無いことから,特殊な機能を備えた光学部品など,アイデア次第で様々な応用に期待ができそうだ。
2014/7/10 表面抵抗率を修正しました(100→45Ω sq-1)