最近シリコンバレーを訪問された方にはお解かりいただけると思う。サンノゼ地域からサンフランシスコ市街にいたるまで,建設途上あるいは新築のオフィスビルが此処彼処に見られる。しかも,従来の平屋風オフィスモールではなく数階から高層のまさしくビルディング建設が目立つ。
サンノゼ市は今や全米屈指の大都市となり,人口100万に膨れ上がった。そして,なおもシリコンバレー企業の拡大路線や新興企業の勃興によって,過剰なほどの雇用増加が続いている。サンノゼ市の試算によると,商業開発プロジェクトから期待される税収入による採算は開発用地100平米当たり年間約1,140ドルの黒字らしい。例えば500 m四方程度の土地で約3億円の歳入増が見込まれる。自ずと近隣自治体も含め,デベロッパを誘致,それらのオフィスビルを含む商業地域の開発や再開発に繋がっている訳だ。
そんな建築ラッシュの中でも,一際目立っているのは所謂シリコンバレー大企業によるキャンパス拡大である。既に周知となっているApple本社新拠点については本誌2015年12月号でもご紹介した。その後,建設は進んで巨大なリング状4階建てビルディングの外殻と各階の張出し屋根,それから各階全面にはめ込まれた緩やかな曲面の大判ガラスといった外装は概ね完成した。現在は,そのニックネーム「スペースシップ」に相応しい外観を現しており,中庭は緑の木々に覆われた広大なキャンパスとなる予定だ。現本社同様クパチーノ市内にあり,建設費50億ドル以上と言われる新拠点には約12,000人超の社員が就業可能となるとされている。
目立つと言うよりも異様な形と形容したほうが良いかもしれない姿を見せているのがnVIDIAの新ビルディングである。場所はサンタクララ市,Intelに程近い現在のキャンパスに隣接した旧キャンパスの再開発として建築されている。いくつもの大きな三角形が各辺で立体的に角度を持って接続,形成された天蓋は今にも畝りだしそうだ。骨組みを構成する鉄骨も三角を基調とした組合せ,話によるとポリゴン図形からアイデアを得た設計らしい。建屋内にどのような形状で部屋が造られるのだろう,と言った疑問は全くの野暮に聞こえるかもしれないが,まさにそんな外観なのである。約45,000平米の面積,最終的には周囲が緑で覆われることになる新ビルディングは,二階建て約2,500人を収容可能の見込みで,建設費は約400億円になるという。
Facebookは,屋上に自然空間と一体化するという趣旨の広大な庭園(面積約35,000平米のピクニックエリア)を設けた約2,800人を収容の新たなビルディング,および高速道路を隔て反対側にあるメインキャンパスの間を繋ぐトンネルを昨年建設した。さらに今年もメンロパーク市内の二つのオフィスビルディング(合計約6,500人収容)と1,500軒からなる賃貸アパート群の開発プロジェクトを7月に発表した。忘れてならないGoogleは,昨年発表した敷地面積約20万平米の壮大な拠点構想の第一歩として,同じくマウンテン・ビュー市で本社拡大を目指すLinkedInとお互いに隣接する不動産の交換契約を締結した。Googleの計画によれば透明・軽量かつ変更・再構築が可能な天蓋で覆われた新本社建屋群を建設する予定という。
大企業が牽引し,地域自治体が推進するオフィスビル群の建築ラッシュ。一方で,住宅供給が追いついていないという批判の声を受けながらも,まだまだシリコンバレーの風景として続きそうである。
(月刊OPTRONICS 2016年10月号掲載)
オプトマーケティングUSA
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JABI(日米ビジネス・イニシアティブス)・シリコンバレー会員