1. はじめに
米国調査会社BCC Researchによると,世界のプロセス用分光器市場規模は,2014年に11億米ドルに達した。同市場は今後5.5%のCAGRで推移し,2015年の約12億米ドルから2020年までに15億米ドルに達すると予測されている。
同社の調査結果をまとめた調査レポート「プロセス用分光器:世界市場」の中から一部をご紹介したい。
2. 概要
プロセス用分光器は製造工程をリアルタイムで観測し,最適化する用途で利用される分光器全てを指す。分光機器をどのように用いるか決まったルールがあるわけではないが,多くの企業では品質管理,あるいは規制遵守のために分光法を採用している。
分光機器は,化学,製薬,石油精製,半導体など,高速大量処理,繊細なコンディション管理が必要な製造工程で用いられることが多い。そうした企業の多く,特に製薬業界,食品業界は,政府官庁から厳しい規制を課せられている。FDAのProcess Analytical Technology(PAT)プログラムなど,政府主導の取り組みもあって,製薬企業ではより洗練された製造技術を採用する機運が高まっている。PATプログラムでその利用法が示されているわけではないが,分光法は製造工程の管理には最適のソリューションとなる。データ分析機能,コンピューティング環境と組み合わせれば,安定した解析能力を得られるからである。
プロセス分光用機器は利用される場所,工程によって区別されることもある。しかしながらハンドヘルド機器の普及によりそうした状況は変化してゆくだろう。
アットライン分光機器は製造工程の一部として,あるいは製造工程の再度のステップとして,あるいは製造ラインに隣接してはいるが別のラインで利用される。
オンラインプロセス分光は製造中,収集されたデータをオペレータが監視するために用いられる。分析結果で,問題あり,あるいは不適格となった場合,オペレータは製造工程をいったん停止,あるいは変更することになる。
インラインプロセス分光はオンラインプロセスと同様,製造工程中に実施されるが,インライン分光は製造工程そのものに組み込まれている。例えばあらかじめ設定された品質に達しない製品を検知した場合,自動的に工程管理機能が起動される。より複雑で堅固な工程管理と,バックエンドのコンピュータシステムを組み合わせれば,真の最適化に向けて継続的に工程の改善を行うこともできる。
プロセス分光機器は製造設備や機器に対する設備投資の一環として導入される。
プロセス分光機器の売上はビジネスサイクルと大いに関連している。売り上げは年によってかなり上下動することになる。年々の変動をならして平均すれば,2015年から2020年までの5年間で年率5.5%で成長することになると予測される。同期間に予測される経済成長率3.5%よりも高い数値である。
いくつかの市場区分では平均より高い成長が期待されている。例えばハンドヘルド機器は年率10%で推移すると予測されている。