4. 技術別市場
プロセス分光機器の種類別世界市場を以下に示した。プロセス分光機器はプラントで用いられるため,食品などの消費者向け製品よりも各年の売り上げの変動が大きい。また,その他の技術市場度同様,新興技術の登場,急激な技術革新があると,成長率が急激に高くなる傾向がある。市場を長期にわたり継続観察することで,そうした個々の技術の成否を見て取ることができる。
プロセス分光市場の大半は技術によってけん引されている。一方では,製薬向け応用のように,FDAの規制,PATイニシアチブなど,規制による後押しが成長要因となっている新しい応用もある。PATイニシアチブではプロセス分光システムの導入を示唆するものではない。しかし業界トレンドは製造過程に分析的なプロセス管理技術をひろく導入する方向に向かっている。
加えて,製薬業界はサプライチェーンのその他の部分においても技術的な要件を採用しようとしている。医薬製品の物流,配送中に至るまでの,透明性向上,説明責任強化などがその例である。強力なコンピューティングインフラに支えられたプロセス分光システムを大量に導入することで,企業内の機能のさらなる統合が促される。たとえばRFIDなどのサプライチェーン管理アプリケーションを,GPSによる位置情報技術を組み合わせ,製品のトラッキングを行うと,流通における全ての過程で100%の透明性が得られる。
4.1 レーザーブレイクダウン分光法
コンポーネントの小型化,低電力,携帯可能なサイズなどが実現したことにより,レーザーブレイクダウン分光法(LIBS)への関心が高まりを見せている。NASA,欧州宇宙機関(ESA)やその他の軍事機関が技術的な発展に寄与している。例えば,レーザーブレイクダウン分光法を構成する機器であるレーザー分光カメラ(ChemCam)は,マーズ・サイエンス・ラボラトリーのミッションで2012年に火星に持ち込まれたものである。
レーザーブレイクダウン分光法はリモート分析に光学技術を応用したもので,対象への光アクセスさえあれば分析が可能である。また,非侵襲的で対象への接触を必要としないため,適切な望遠機器と組み合わせれば,遠隔分析の技術としても利用できる。そういった特性は,人体に有害な環境から宇宙探査まで,幅広い有用性を持つ。また,光学顕微鏡との組み合わせでマイクロサンプリングにも応用可能で,さらに複雑で柔軟な分析が可能となる。