QWIPは,主にGaAsとAlGaAsなど,バンドギャップの異なる半導体の積層構造により形成される量子井戸を利用する。QWIPが対象とする波長領域は長波長である。量子井戸の素材,構造により対象波長の調整が可能である。最大画素数は1024×1024,ピッチは20μmである。QWIP素子には積層構造に対して垂直に入射する赤外線の方向を変換する光結合構造が必要とされる。
Type II歪層超格子(T2SL)はInAs層とGaSb層を交互に形成した構造を持つ。層の厚さでバンドギャップを調整することで,短波長から長波長までに対応する。最大画素数は1024×1024,ピッチは18μmである。
InxGa1-xAsは暗電流の低さから,短波長領域のイメージングで広く用いられている材料である。InGaAs層は組成比xを0.53としてInP基板上で成長する。典型的なスペクトル感度は室温で0.9−1.7μmである。組成比xを0.82に近づけると,カットオフ波長を2.6μmまで広げることができるものの,エピタキシー効果,シャント抵抗値の減少や,バンドギャップの小ささが結晶の欠陥につながり,長波長においては性能が悪化する傾向がある。最大画素数はHD,ピッチは12μmとなる。
素材の特性,製造量,分量などの面からHgCdTeとInSbが最も重要な素材であることは間違いない。QWIPは,Ⅲ-Ⅴ族半導体技術を用いた大型検出器の製造などの利点があり,今後の普及が見込まれている。その他にも,T2SL,nBnなど,新たな素材の商用化が待たれている。短波長で最も普及している素材はInGaAsである。
分子線エピタキシャル成長による量子ドット,コロイド量子ドットなど,実験レベルでは新たな構造,素材が登場しているが,いまだに商用化の域には達していない。
図2は,世界中の赤外光検出,画像化製品メーカーの所在地を示すものである。