1.　はじめに

先進運転支援システム（ADAS）は，フォトニクス技術のエンドユーズ部門として最も有望視されている。ADAS向けフォトニクスの市場は2014年から2020年にかけて約22％のCAGR（複合年間成長率）で推移し，2014年の30億ドル（28億ユーロ）から，2020年には100億ドル（90億ユーロ）規模に成長すると予測されている。

今回は，光学・フォトニクス市場を専門とする調査会社Tematysがまとめた調査レポート「自動車産業におけるADAS（先進運転支援システム）向けフォトニクス技術」から一部を紹介する。

2.　ADAS向けフォトニクス技術の概要

光学部品は約100年前にヘッドランプとして自動車に採用されて以来，クルマの照明機能の洗練に不可欠な存在であった。また，従来の超音波，レーダーを補完，あるいは置換する技術として，光学センサーがADASシステムに導入されつつあり，今後，自動運転車の普及に伴い市場シェアを急速に伸ばすと目されている。

ADASが自動運転車へ発展すると光学センサーの市場はますます拡大するだろう。自動運転は数年前にはただの夢でしかなかった。しかし，Googleカーの実験結果が当初の期待を大きく上回ると，本流である自動車メーカーが揃ってプロジェクトへの参画を決めたため，その状況は一変した。

自動運転車に必要とされる光学技術のうち，CMOSカメラ，レーザースキャナー，LIDARなどはすでに実用化に向けて動き出している。しかしながら自動車業界で大量に採用されるためには，強い値下げ圧力に対応する必要がある。光学機器メーカーは技術的に最適なソリューションから大量生産へかじを切らなければならない。

今後，分光分析など革新的なセンシングソリューションの導入を目指して，標準化された高い信頼性を持つコンポーネントの実現が待たれている。15年前には，MEMS技術が大幅なコスト削減を実現させ，自動車業界へ進出した例があった。