7. 自動運転車の動向
自動運転車をリードしてきたGoogleは,カリフォルニア州で継続的にテスト走行を行っており,2018年の製品化を目指している。ボルボは自動運転車を発売する最初のメーカーのひとつになろうとしている。2017年にスウェーデン,イェーテボリで自動運転車100台の路上走行試験が予定されている。
メルセデスは自動運転車の実現に向けて,中国の検索大手,百度と提携関係を構築し走行試験を行っている。最近の実証試験では,自動運転で時速100キロを達成し,右折,左折,Uターンを成功させた。他にも,前方の車を発見した場合の減速,車線変更,追い越し,また,高速道路への進入退出を自律的に行ったと報告されている。
フランスPSAグループはパリからボルドー,580キロの長距離自動走行試験を2015年11月に成功裏に終えている。
日産は2020年までに完全自動運転車を開発するプランを発表した。今後は,高速道路や幹線道路といった人工的な環境から離れ,より自然な環境でさらなる試験が予定されている。
8. 価値と価格の一致へ向けて
2014年に,ミシガン大学で自動運転車に対する価格感受性について調査が行われた。結果,自動運転機能に対して追加予算を組むと答えた割合は非常に低いことがわかった。米国では54.5%がクルマ本体の価格を変更することなく自動運転機能が追加されるべきと答えた。しかし,自動車メーカー各社の熱心なADASキャンペーンによって,自動運転車への関心は徐々に高まっている。
1年後にゴールドマンサックスが米国で2000人を対象に行った調査では,自動運転機能への追加予算に否定的であった54%を3つのカテゴリに分類した。そのうち14%は,やはり無償で自動運転機能を追加すべきという意見だったが,残りの16%は500ドル未満であれば,また24%は1500ドル未満であれば支払う用意があることがわかった。このようにユーザーが受け入れる価格と販売側の設定価格の差は縮まりつつあり,2020年頃にはアーリーマジョリティ層向けにADASが投入されると予測されている。
9. 地域別トレンド
ADASの初期市場と目されているのはスポーツカー,高級車だが,その消費は年間300~500万台に過ぎない。10台以上のカメラ,レーザースキャナー,AFSなどを含めて2000~3000ドルのADASパッケージを購入する余裕があるのもそういった層である。
しかし,図4が示す通り,それらはニッチ市場に過ぎない。
では,いつ,どこでADASの大規模な採用が始まるのか?OECD加盟先進諸国では,駐車場の飽和化が進む一方,インフラへの投資は遅れがちである。しかし,新興国では4つの理由から自動運転車の急激な普及が期待されている。