4. 世界の業種別中赤外線レーザー市場
中赤外線レーザー市場は,防衛,研究,医療,ヘルスケア,化学,その他に分類される。その他には通信,宇宙探査などが含まれている。中でも防衛分野が最も大きな市場を占め,化学,医療がこれに続く。
防衛向け市場の規模は2014年の1億5,970万米ドルから2019年には1億9,140万米ドルに達すると見られている。化学向け市場は2019年に1億7,830万米ドル,調査研究向け市場は最も成長率が高く,2019年には医療分野を追い抜いて,1億6,430万米ドルまで拡大する。
①防衛
中赤外レーザーは航空機を熱探知ミサイルへの対抗手段,あるいは友軍誤射を防ぐビーコンに利用されている。また赤外線防衛(IRCM)はミサイルが標的に到達するのを防ぐ。IRCMの商用機への導入も試みられている。
中赤外線を利用した軍事用機器は兵士の安全性を高めるため,より多くの予算がこの分野の開発に充てられるようになっている。その結果,中赤外線セグメントの技術的進展が加速されている。量子カスケードレーザーの防衛兵器への導入がその一例となっている。
②研究
中赤外線の調査研究分野での応用は,周波数計測,分光分析から,産業プロセスコントロール,通信,光生物学,光化学,光医学など多方面にわたる。分子ガス,水中,空中,地中の汚染物質,毒性物質,呼気成分,爆発性物質なども,中赤外線領域で高い吸収強度を持つため,中赤外線は様々な調査研究において欠かせないツールとなっている。
③医療
医薬品の製造工程を各段階でモニタリングすべき,というFDAのガイダンスを受けて,北米の医薬業界における中赤外線利用が増加している。従来のモニタリング技術は,正確性と速度に問題があり,その代替技術として中赤外線が利用されている。また医薬開発の迅速化,再現性が高く有効な製造技術への需要から,リアルタイムの化学的モニタリングプロセスが注目を浴びている。中赤外線技術は,正確性,様々な製造環境への適応性といった面で,こうした要件を満たす。中赤外線によるIn-situ分析もまた化合物の複雑な化学反応を測定する上で主要な手段となっている。中赤外線をトレースに用いることにより,医薬製造経過で起こる科学的な変化を詳細に知ることができる。
④化学
中赤外線は原油流出の検出に用いられている。漏出による原油の流出は環境に甚大な被害をもたらすため,石油業界にとって,あるいは環境的な側面から,原油流出の検知は非常に重要なタスクとなっている。
また,環境への親和性から注目されているバイオディーゼルの純度測定には,ハンドヘルド型の中赤外線分光計が用いられている。