③広帯域レーザー
広帯域レーザーは,時間分解分光法,強高度場物理など幅広い用途で用いられている。3μmから6μmの波長は,重要な分子振動とオーバーラップしており,超導電性物質,CMRなどの強相関材料における電子状態の変化の測定に適している。量子半導体のサブバンド間遷移もまた中赤外領域の現象となっている。中赤外領域のパルスは高調波生成のカットオフエネルギーの制御にも有効とされている。
中赤外線領域には,重要な分光情報が含まれているにもかかわらず,適した光源はあまり存在しなかった。光パラメトリック発振器は,レーザー光源では到達できないこの重要なスペクトル領域の光出力を得るために利用されてきた。ここ数年で,様々な研究機関が中赤外における広帯域出力を目指して二重共鳴OPOの研究に取り組んでいる。
従来のOPOでは,強力なレーザーによって適切な光学材料の二次非線形感受性を増幅してきた。光学的なフィードバックのための共振器と組み合わせると,より長い波長の発振がひとつ,あるいはそれ以上発生する。発振波長の調整は共振器,あるいは非線形材料の選択により行なわれる。
OPOはその広い可変性と高い出力から,中赤外領域での分光アプリケーションに広く用いられている。量子カスケードレーザーは代替として検討されているが,個々のデバイスの同調範囲は比較的狭いため,超広帯域での測定にはあまり適していない。一方,OPOは広い範囲に同調可能だが,精密性,連続性に問題がある。
広帯域OPOは,フーリエ変換IR分光法の原則によると,並列の高分解脳分光に特に適している。OPOは10 mW未満の低ポンプ閾値で二重共鳴し,出力された中心波長がポンプの2倍の近縮退で同期するよう設計されており,非線形プロセスのアクセプタンス域が非常に広くなる。低分散共振器と組み合わせると,波長チューニングなしでより広い出力帯域が可能になる。
これらの設計を可能とする要素としては,近赤外領域で安定的にモードロックされる超高速ファイバーレーザーの商用化が挙げられる。超高速ファイバーレーザーを同調ポンプに利用すると,NIRポンプレーザーのcombモードは,二重共鳴OPOに特徴的な広いスペクトル広がりによって中赤外領域に変換される。
広帯域レーザー市場をリードするのは北米地域だ。北米の広帯域レーザー市場の規模は2014年の5,200万米ドルからCARG 11.9%で拡大し,2019年までに9,110万米ドルに達すると予測されている。北米についで大きな市場である欧州は,2019年には8,490万米ドル規模にまで成長する。アジア太平洋市場は規模こそ小さいものの,CARG 22.0%と北米のほぼ倍の速度で拡大し,2019年には3,270万米ドル規模に成長すると見られている。