光とは—波長特性について1—


図1 カリフォルニア大学の校章
図1 カリフォルニア大学の校章

1.光とは

1.1 光の基本パラメータ

光学は最も古い学問の一つと言ってよい。ニュートンを始め昔の著名な物理学者は何らかの形で光と関係を持つ研究をしている。光はそれだけ興味深い研究対象であったし,現在もまた然りである。

図1はカリフォルニア大学の校章であるが中に“Let there be light”という言葉が記されている。聖書の創世記第1章3節にあるこの有名な言葉は,光学の先達が好んで引用する文章にもなっている。

当初,光学が取り扱っていたのは可視光の範囲であったが,現在取り扱う範囲は赤外,紫外へと広がってきた。赤外光の存在が発見されたのは1800年,紫外光は1801年である。

図2 光の基本定数
図2 光の基本定数

我々は先ず自分達が取り扱う範囲の光のパラメータを定義しておかねばならない。光を我々に最も分かり易い形で規定しているのは波長λである。本稿ではEUV(極端紫外)領域から遠赤外の領域をカバーする10 nm〜100 µmくらいの範囲を扱う。図2に光に関するもっとも有名な基本定数として,次の3つをあげておく。光速c,Planck定数h,電気素量eは一般にもよくこの表記で使われるので,以降も特に断りなく使用することとする。

1.2 波長

光工学で中核にあるのが可視光領域である。光はその特性を活かして表示,計測,加工,通信等の用途で用いられる。自然の摂理と言うしかないが可視光の波長域は太陽のピークスペクトルと対応する。人間の視感度の特性は太陽光にマッチングして進化を遂げた結果とも言われる。この領域は環境による大きな吸収もなくエンジニアリング上でも非常に都合の良い位置に存在する。

図3 人間の比視感度(明所視)
図3 人間の比視感度(明所視)

CIE(Commission Internationale de l’˙Eclairage:国際照明員会)による人間の目の平均感度特性を図3に示す1)。ピーク値1を取るのは555 nmで短波長側は360 nm,長波長は830 nmまで数値が出ている。実用的には380〜780 nmを人間の観察可能な波長と考えることができよう。なお,JISのレーザの安全基準で可視域に特別に適用されるクラス2の波長は400〜700 nmとなっている2)

可視光を赤から紫の7色に分けたのはNewtonである。理由は1週間が7日,音階が7段階,当時知られていた太陽系が太陽から土星までの7つの星でできていた(天王星発見はNewton死後54年の1781年)ことに示される宗教的世界観の影響とされる。我々が多彩な色を観察できるのは,この波長域での物理現象が豊富なことの証左である。

光の記述には様々な指標が存在する。波長は勿論であるが,赤外分光では波長の逆数である波数が指標として使われる。通信分野では時間軸と組み合わせて振動周波数が指標となるし,個々のフォトンエネルギーそのものも指標となる。この場合,次の単位が用いられる。

式⑴

ここでは波長を指標として採用し,長い方から赤外,可視,紫外と順番に光がどのような状態にあるかの簡単なレビューから始めることとする。光がいかに広い範囲で応用されているかが理解されよう。サブとしては光源をもう一つの軸とする。波長域がオーバラップする場合も多いので,説明の順序が多少前後するところは御容赦いただきたい。

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